安藤圭祐

地域特性を考慮した多時期MODIS画像による融雪期の積雪分布推定手法の研究

力丸厚, 高橋一義

雪を防災管理や水資源・観光資源として有効利用するためにも,積雪分布状態を時間的・空間的に把握することは非常に重要になってくる.そこで積雪が多く分布する山岳地帯でも広域観測可能なリモートセンシング技術が有効になってくる.しかし,光学センサでは雲がかかると地表面の情報を得ることが出来ないため,悪天候な日が続く冬季では衛星画像での高頻度観測は困難である.また,一昨年度の「平成18年豪雪」,昨年度の歴史的暖冬など,年度によって降雪量は大きく変化を見せており,地域によっても融雪の速度は年々変化する.これまで本研究室では雲域下の積雪分布推定手法が開発されてきたが,年次や空間的な場所の違いによる融雪状況の違いを考慮していなかった.そこで本論文では,融雪の地域特性を考慮した雲域下の積雪分布推定手法を検討することでより高精度での積雪分布推定を実現することを目的とした.
本研究では,地域特性を考慮するためにまず,過去6年分の融雪期衛星データから積雪と無雪の境界位置の移動過程が類似している領域を地域特性類似領域として特定を行った.ある領域内を推定する場合,その領域に対する地域特性類似領域内の情報のみを用いて積雪分布推定を行うことで地域特性を考慮するものとした.また,過去の衛星データから積雪頻度画像を作成した.好天時画像に仮想の雲域を設定し,雲域下の積雪分布推定を行った.その際の手法として雪線手法と融雪領域手法の2種類の手法を用いた.実際の積雪域を真値データとして検証した結果,合致率は雪線手法では58.6%,融雪領域手法では72.8%となった.
次に,積雪分布推定において地域特性を考慮したことで推定結果がどのように変化するかを確認した.観測時期が異なる好天時画像6シーンに仮想雲域5パターンを組み合わせた全30通りの画像において,地域特性を考慮した雪線手法,地域特性を考慮しない雪線手法,地域特性を考慮した融雪領域手法,地域特性を考慮しない融雪領域手法を用いて雲域下の積雪分布推定を行った.それぞれ検証を行い,合致率を比較した結果,平均では地域特性を考慮することで雪線手法では合致率が低下し,融雪領域手法では合致率が向上した.また,地域特性を考慮しない場合に合致率が低いと,地域特性を考慮することによる合致率向上の効果が大きい傾向が見られた.

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