浅野幸士

ニッケル系高耐候性鋼材を用いた橋梁の腐食状況に関する研究

岩崎英治

近年,ライフサイクルコスト低減が橋梁についても重要な課題となっている.そこで,注目されてきたのが耐候性鋼材である.耐候性鋼材は,適切な計画,設計,施工を行えば無塗装のまま長期間に渡り優れた防食性を有する鋼材である.既住の研究から飛来塩分が0.05mdd(mg/dm2/day)以下の環境下であれば保護性のあるさびが成長することが知られている.このことから耐候性鋼材を無塗装で橋梁に用いる場合,全国の海岸を5つに区分けをし,地域内で飛来塩分量調査を行わなくても使用してもよい離岸距離が設定された.
平成9年から実橋梁への適用が開始されたニッケル系高耐候性鋼材は,耐候性鋼材の適用限界とされる飛来塩分量が0.05mddを超えていても適用が可能とてされている.このニッケル系高耐候性鋼材は,主にニッケルを多く含有し防食性を高めた鋼材である.この鋼材は各メーカーによって合金の含有量が異なるという面を持っている.その為,ニッケル系高耐候性鋼材の耐候性性能を定量的に評価するために,耐候性合金指標Vが提案されている.この指標は,各鋼材に含まれる合金元素の耐候性に及ぼす影響をそれぞれの元素ごとに検討し定められたもので,この耐候性合金指標Vが大きいほど高い耐候性を有する鋼材となる.しかしながら,ニッケル系高耐候性鋼材を橋梁に用いる際の実環境での明確な基準は示されていない.そこで本研究は,飛来塩分量が0.1mddから0.3mddの環境に建設されたニッケル系高耐候性鋼材を用いた橋梁3橋の曝露試験片および実橋梁のモニター調査を行い0.05mddを超える飛来塩分環境での腐食状況の分析,評価することで基準の策定のための知見を得る.
本研究における腐食調査の知見を述べる.(1)モニター点調査においてさび厚の増加は観測できたが,板厚の腐食減量は計測できなかった.(2)さび厚計測,外観評点,セロテープ試験の評点は部材や部分においてばらつきが見られた.特に,下流側の下フランジ面では荒いさびが見られた.(3)暴露試験片の暴露前後の試験片重量計測結果から,3橋ともに100年後の腐食減耗量が0.5mm以下と推定された.(4)橋梁建設後,1年半から2年半での調査の為,今後継続的に調査を行う必要がある.

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