三浦 大右

繰返し載荷による不飽和砂質土の強度特性

豊田浩史

2004年に発生した新潟県中越地震により多大な被害が発生した.旧山古志村を中心とした地域では地震により多くの箇所で崩壊や地すべりが発生し,芋川流域では5カ所において地すべり等により大規模な河道閉塞が発生した.また,集水地形での崩壊が多く見られ,中越地震の3日前に上陸した台風23号による豪雨が,多くの斜面崩壊の誘発につながったと考えられる.地震後の調査により崩壊面は砂質土優勢の地盤であることが明らかになった.台風による豪雨や集水地形であることが,斜面崩壊の誘発につながっていることを考えると,地盤の飽和度が重要となってくる.一般に地盤は地下水面を挟み飽和土と不飽和土の両方が存在し,飽和土は非圧縮性の土粒子(固体)と水(液体)の二相混合体で構成されているのに対し,不飽和土は非圧縮性の土粒子(固体)と水(液体)に加え,圧縮性の空気(気体)を含んだ三相混合体であり性質が異なる.飽和状態で存在する土が多いとはいえ,実際に斜面では不飽和状態であることが少なくないことから,不飽和土に関しても工学的な研究が必要であるといえる.しかし不飽和土に関しての工学的性質の研究は飽和土に比べ遅れており飽和土のように確固たる理論が確立されていないのが現状である.そこで本研究では実際の斜面崩壊箇所から試料を採取し飽和度を考慮したうえで地震時の地盤条件を再現して力学試験を行った.本研究の成果を以下に示す.
1.中越地震時の崩壊箇所から採取した試料の内部摩擦角は乱れ具合及び飽和度によらず一定である.
2.不撹乱試料を不飽和化した場合の粘着力は,不飽和化による見かけの粘着力に加え,年代効果による固結分が足されて現れる.
3.不撹乱試料は撹乱試料に比べ,固結の影響で繰返し載荷による強度低下が少ない.
4.不飽和試料は飽和試料に比べ,粘着力の影響で繰返し載荷による強度低下が少ない.
5.不飽和砂質土は,定体積条件以外では,繰返し載荷によりほとんど強度低下をおこさない.

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