小川 直也

中層密度流の貫入現象に関する室内実験

細山田 得三

密度流とは、二種の流体の密度差が起因となり発生する流下・上昇運動であり、自然界においては頻繁に発生している。例として、ダム貯水池に流入する濁水が挙げられる。貯水池に流入した濁水は密度躍層に到達すると、下層流体より密度が小さいものは躍層に沿って進入するという現象が起こる。この現象を中層密度流の貫入現象という。中層密度流は濁水長期化の主な原因として挙げられ、下流水域の環境問題や堆砂問題と関係があり、本研究室では継続的に研究を進めている。そこで本研究は中層密度流の挙動を解明することを研究目的とし、ダム貯水池内を単純化した室内実験を行った。流量、周囲流体密度を固定し、流入条件や流入流体密度を変化させ、挙動を比較考察した。また、流入流体中にトレーサー粒子(DIAION粒子,粒径250〜700μm密度1.02g/cm2)を混入し、Flow-vec32を用いて画像解析を行った。これにより、中層密度流の内部流速ベクトルが計測された。以下に実験結果の説明を行う。
中層密度流の先端部形状は流入流体密度と周囲水の密度によって上に凸から下に凸へ遷移していくことがわかった。そして、流入条件によって先端部の密度が変化し、先端部形状に強く影響することがわかった。
先端移動速度が急減すると層厚が急増する傾向があり、先端移動速度と層厚に相関性が見られた。そして、流入条件により流入直後の先端の挙動が大きく変化し、層厚に大きく影響することがわかった。
内部流速ベクトルの計測において、今回は計測範囲を固定し、流速と層厚の時間変化が求められた。流速はトレーサーの粒径の大きさから沈降・浮上の影響を無視できないものとしてx(水平)方向の流速のみを取り扱い、また、層厚は計測点の数から算出された。x方向の流速、層厚ともに流入流体の密度変化に対し上記の先端移動速度と層厚の計測と同様の傾向が得られた。また、先端の流速が最も大きく、時間経過とともに層厚が大きくなるにしたがって流速が減少していくことがわかった。
今後の課題は、密度分布の計測を行い、流入条件による混合の度合いを定量化すると同時に、さらに多くの条件で実験を行うことが必要だと考えられる。また、トレーサー粒子を上下層にも散布し、中層密度流内部だけでなく全層において流速ベクトルを計測することができれば更なる研究の発展が期待できる。

前のページに戻るには"戻るボタン"で戻ってください。