伊藤亜矢子

阿賀野川の河口地形変動が塩水遡上に与える影響

細山田得三

河口は海岸と河川が接する場所であり潮汐と河川流が互いに影響している.そのため,海水面の上昇により海水が河川内に遡上する塩水遡上が発生する.遡上した海水が農業用水や工業用水の取水地点まで到達すれば,農作物や様々な製造物に損害を与える.
塩水遡上は河口地形の影響を受けると考えられるため,洪水によるフラッシュや冬季の風浪による発達など河口砂州の変動による塩水遡上の変化について調べる必要がある。既往の研究では,塩水遡上に関する研究が多くなされ,河川の水理諸量,河口地形,気象,潮汐等との関連性については多くの知見が得られてきた.これまでに不等流の塩水遡上については多くの知見が得られているが,非定流の塩水遡上を対象とした例はあまり無く,詳細な挙動については明確では無い.本研究では,阿賀野川河口部の地形変動に着目し,数値シミュレーションにより,砂州の有無が塩水遡上に及ぼす影響を定量的に把握する事を目的とする.
本研究では、H17, 18年度の2年間に渡って阿賀野川河口部で計測した塩分,流量,水位,水温等の計測結果を元に,砂州の形状の違いが塩水遡上にどの様に影響しているか考察した.また,より詳細な検討を行うために1次元数値モデルで数値シミュレーションを行い,非定流の塩水遡上の挙動を算出した.
計測データより,H17年とH18年の塩分と河川流量の関係から,流量が減少する時期に塩分量は増加し,流量が増加する時期に塩分量は減少する事が分かった.塩分と河川流量は密接な関係といえる.H17年とH18年の塩分量の差は明確には出ていなかったが,H16年の7.13水害での砂州のフラッシュより,H17年は,砂州は形成途中であり河口断面積が大きい事から,H17年の方が塩水は河道へ浸入しやすく,H17年の方は海水が多く遡上していると考えられる.次に数値計算の結果,砂州無しのと砂州有りの場合では,塩分水位の変化は砂州の地点での水位変化は見られたが,砂州を含まない地点での砂州無しと有りでの違いは見られなかった.また,塩水遡上の流速を比較してみると殆ど変化はしていなかった.
本研究では,計測結果から砂州の形状の違いは塩分遡上に影響を及ぼす事が分かった.しかし,数値計算からは,砂州有無が,塩水遡上に及ぼす影響は見られなかった.今後,長期的にデータを取得する事により詳細の塩水遡上の動態を知る事ができると考えられる.
 

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