増戸 洋幸

k−ε乱流モデルを用いた中層密度流の解析

細山田 得三  福嶋 祐介

 洪水時に河川流域から生産される多量の微細砂(200μm)を含む濁水が成層した貯水池に流入すると,密度躍層に到達した濁水はそれ自身の密度分布と貯水池水の密度分布の相対的な関係により,流入濁水の一部またはすべてが躍層界面に沿って水平に向きを変えて,楔状に貫入する.これを中層密度流と呼ぶ.中層密度流は,濁水長期化の主たる原因として挙げられ,下流水域の環境問題や堆砂問題と密接に関係している.中層密度流の流動特性を明確にすることにより,このような問題に対して効果的な対策を講じることが期待できる.
 Kao(1977)は理論的に中層密度流の先端移動速度を求めているが,非粘性流体の仮定に基づいているため,実現象を精度良く再現できてはいない.そこで本研究では,乱流特性量の計算に乱流運動エネルギーk と分子粘性逸散率εを未知数とするk−ε乱流モデルを用いて中層密度流の数値解析を行った.プログラムの妥当性を検証するために福嶋(1981)の行った二次元貯水池密度流の実験結果と比較を行った.その後,流入流体と下層流体の密度を変化させた中層密度流の実験結果との比較を行い,計算モデルの妥当性を検証した.次いで,中層密度流の流動特性の解明のため流速ベクトルと濃度コンターを求めた.
 中層密度流の先端移動速度と先端部厚さについて,数値計算結果は実験結果とよく一致した.また,流入流体と下層流体の密度の変化による傾向の違いがみられた.
流動特性に関して,流入流体の密度が増加すると先端部の形状は下部にふくらみをもちはじめ,上層の流速ベクトルによる循環流は徐々に弱くなり,下層において進行方向とは逆向きの流速ベクトルが発生し大きくなることがわかった.また,下層流体の密度が増加する場合,先端部の形状は下部のふくらみが徐々になくなり,上層の循環流は強くなり,下層における逆向きの流速ベクトルは小さくなることが示された.
 理論的検討として乱流特性をあらわすパラメーターであるリチャードソン数を用いて計算結果の整理を行った.その結果,リチャードソン数が小さくなるにしたがって無次元層厚が大きくなる結果となった.これにより,実際の貯水池においても温度躍層と流入濁水の関係からリチャードソン数を求めることにより,中層密度流の層厚推定可能であると考えられる.
 以上の結果から,本研究で作成した数値計算モデルにより中層密度流の流動特性が明らかとなった.

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