渡邊慶輝

中越地震の被災事例に基づいた斜面の耐震安定解析に関する検討

大塚悟

1995年の兵庫県南部地震を契機に,土木学会は土木構造物の耐震基準などに関する提言を行った.しかし,兵庫県南部地震では土木構造物の被害に対して土構造物の被害は注目されず,耐震安定性に関する議論は不十分であった.そのために,土木学会の提言に対する対応も土構造物の場合には未だに研究課題となっている.本研究は土構造物の耐震安定解析の検討を目的に,中越地震の地震被災例を用いて水平震度を逆算する.崩壊・未崩壊斜面の逆算水平震度を比較することで,観測地震加速度と水平震度の相関関係の検討を行う.本研究では長岡市高町団地の盛土被害と小千谷市横渡地区の岩盤すべりを解析対象とした.
高町団地では,土地造成に用いた盛土が地震によって斜面崩壊を起こした.崩壊地の現地調査および現地採取土の力学試験結果を基に,水平震度の逆解析を実施した.解析では崩壊地4ケース,未崩壊地2ケースの計6事例を対象とした.2次元解析に対して3次元解析を行うと崩壊・未崩壊事例の現象を比較的良く再現した.静的強度を用いた場合には地下水位を設定することにより,震度係数が約0.25と得られた.一方,繰返し強度を用いると震度係数が約0.15であり,崩壊事例を説明できた.未崩壊地区で解析上崩壊すると判断される事例は地下水位が低いために崩壊を免れたと推察される.
横渡地区の岩盤崩壊は凝灰質砂岩薄層の上部土塊が滑落する単純な崩壊形態である.崩壊地のすべり面に相当する凝灰質砂岩層の試料を採取し,物理定数及び力学定数を求めた.逆解析では,崩壊地2ケース,未崩壊地1ケースを対象として斜面安定解析を実施した.崩壊斜面背面に地下水の供給源が存在しないことと,凝灰質砂岩薄層が地下水の流路となっていることから,解析では地下水を考慮しないこととした.逆算水平震度係数は0.38~0.4に対して,未崩壊地では0.45が得られた.これより,横渡地区の近隣にある小千谷市妙見観測点で観測された中越地震の地震振動は水平震度係数0.4~0.45に相当することを明らかにした�

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