好井健太

高町団地の盛土崩壊地より採取した中間土の繰返しせん断特性

大塚悟

2004年10月23日に発生した新潟県中越地震では,最大震度7の強い地震動及び震度6強の活発な余震活動の影響で,土木施設等に甚大な被害を受けた.その中でも,斜面崩壊・盛土被害といった地盤被害も多数見受けられた.地震発生前の台風23号による降雨の影響で地盤の飽和度が非常に高かったことから土構造物に被害が拡大した複合災害が指摘されている.
本研究では,新潟県中越地震による盛土被害が甚大であった長岡市の高町団地に着目した.高町団地の盛土は,宅地造成前の地山を切り開いた切土を盛土材として使用しており,土質分類ではシルト質砂に相当する.砂と粘土の中間に相当するために,砂及び粘土としての強度評価が難しい特徴を有している.
本研究は高町団地の盛土崩壊地より採取した試料に対して,飽和土の繰返し載荷試験及び含水比調整試料(不飽和土)の繰返し載荷試験を行った.繰返し載荷試験により高町団地の崩壊地盛土に使用された中間土(盛土材)の繰返しせん断特性を把握するとともに,試験結果に基づく逆解析によって盛土の崩壊原因を調査した.
以下に,本研究の結論を箇条書きにする.
(1)高町の盛土崩壊地より採取した試料(中間土)の繰返し強度特性を明らかにした.現地の崩壊土及び未崩壊土の間隙比に調整した試験より,間隙比が小さい未崩壊盛土は部分液状化を発生した.
(2)繰返し強度試験より,間隙比によって異なる液状化強度曲線が得られた.不飽和土は飽和度の低下により繰返し強度が増加したが,初期剛性が低下する傾向が得られた.
(3)盛土崩壊事例の逆解析より,盛土と原地盤の地層境界が飽和状態にあると逆算震度係数が0.20に得られ,今回の地震動によって斜面崩壊が生じる結果を得た.地震前の降水が少ない場合にも斜面が崩壊した可能性は高い.

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