堀口 大樹
地理情報を用いた高町団地の地震被害の分析と造成地盤の危険度評価に関する研究
大塚 悟
近年,阪神大震災を契機に宅地造成基準が改正され,宅地盛土の耐震安全性を照査することになったが,危険斜面の絞込みが出来れば有用である.本研究は新潟県中越地震における建物の被災要因を分析し,GISによる危険度判定に用いるモデルの検討を目的とする.
長岡市・小千谷市の建物倒壊率を,常時微動から求められる卓越周期や平均倍率のほか,地盤の標高,マクロ傾斜角を用いて建物倒壊率との相関性を重回帰分析により検討を行った.その結果,信頼度は低いものの決定係数は比較的大きく,各要因との相関性の高さが伺えた.要因では標高の影響が大きく現れたが,特に小千谷市の段丘地形が地質や,振動特性との相関のあることに起因すると考えられる.
高町団地の被害検討では造成開発前後の地形情報より切土及び盛土の高さに関する推定図を作成した.また,この結果の妥当性照査として現地調査である表面波探査結果と比較を行い,おおよそ妥当であるという結果を得た.盛土の分布と地震被害の発生箇所を重ね合わせた結果,主な亀裂の約70%,斜面崩壊地の100%が盛土部に発生している.建物被害も盛土近傍に集中することが分かった.
建物被害は,相対的に盛土部,主に法肩近傍に多くの被害が見られるが,切盛り境界付近では切土部にも被害が多数発生していた.亀裂においても建物被害と同様の結果が得られた.これらのことから建物被害と地表面の亀裂には高い相関関係が成立している.宅地造成地では盛土部における地震被害の危険性が指摘されているが,盛土の変位や崩壊に伴って切盛り境界付近における切土でも地震被害が発生することが分かる.
家屋の被災率は高町全体の統計に対して,盛土部で約2倍,地表面の亀裂上に位置する場合に約3倍の高い結果となった.したがって,土地造成地における切盛り情報のほかに,亀裂や不等沈下の発生位置の推定が加われば宅地の高精度な被害予測が可能と考えられる.
盛土の底面形状の差異による亀裂発生位置の分析を目的に,盛土主断面の底面形状を凸型,直線型,凹型の3つに分類し,亀裂数を集計した.亀裂の盛土相対位置:y/H(亀裂の法面からの距離:y,主断面の最大盛土厚:H)と亀裂の発生割合を分析した.全体的にy/Hが小さい領域にて亀裂が多数発生するが,各形状において多少ではあるが差異が認められた.原地盤の地形と亀裂発生位置との相関については今後さらに検討が必要である.
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