中市 翔也
地盤-基礎体-構造物の相互作用を考慮した送電線鉄塔系の安定性解析
宮木 康之
土木工学が対象としている社会基盤施設は広範に渡っており,構造物の建設には,地盤,鋼構造など広範にわたる専門知識が必要である.現行の設計法は,それらの相互作用について考慮されていることは稀である.しかし,構成要素間の荷重の伝達や各々の変形の影響等,数多くの相互作用が存在すると考えられる.
そこで本研究では,下部構造,上部構造,地盤-基礎体-構造物連成系のそれぞれで三次元有限要素解析を行い,地盤-基礎体-構造物の相互作用と構造系全体での安定性解析の重要性について検討を行った.
その結果,下部構造に関する検討から,以下のような結果を得た.
1. 基礎体の近接に伴い,送電線鉄塔基礎においても支持力低減効果が発現する.
2. 基礎体が近接した状態で引揚げられることにより,基礎体が剛体回転する.
3. 基礎体の近接に伴う支持力低減効果は,基礎体中心間隔が離れると軽微になる.
4. 基礎体の近接に伴う支持力低減は,基礎体の根入れ深さが大きくなると発現し易くなり,支持力の低減効果も大きく受ける.
次に,上部構造での検討では,次のような結果を得た.
5. 鉄塔に作用する外力により生じる鉄塔脚部の反力が,基礎体の引揚荷重として伝達される.
6. 荷重モードによっては,鉄塔部材の座屈により荷重の再分配が発生し荷重伝達メカニズムが変化する.
7. 鉄塔に作用する外力モードにより,鉄塔の座屈荷重が異なる.
8. 送電線の張力により基礎体が受ける引揚荷重の水平分力の影響は非常に小さいは,約$7^{\circ}$が最大である.
最後に,連成系での検討からは,以下のような結果を得た.
9. 地盤が影響を受けやすい外力モードと,鉄塔が座屈を起こしやすい外力モードがあることを確認し,構成要素の強度バランスによってはその影響により鉄塔の破壊メカニズムが変化する可能性があることを確認した.
10. 構造系全体での安定性評価により地盤変形に伴う鉄塔の剛体回転による変位量と,鉄塔の曲げ変形による変位量が評価できる事を確認した.
11. 鉄塔座屈に伴う荷重伝達メカニズムの変化が,構造系全体での検討においても確認され,剛体回転軸の変化等の影響を構造系全体においても受ける.
以上に示したように,構造形態,力学特性の異なる構成要素により構成される構造物は,さまざまな要因によりさまざまな形態の系の破壊が考えられる.
そのため,現在まで行われているような構成要素毎の安定性照査では,不十分であり構造系全体での安定性照査が重要である.
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