水澤健至

地区計画のみを担保手段とした拡大市街地に対する基盤整備手法の問題点に関する研究

中出文平・樋口秀・松川寿也

市街化区域の拡大を行なう際には、土地区画整理事業を主とした計画的な市街地整備が義務づけられている。しかし、地方都市では近年の人口が減少しているにも拘らず、市街化区域が実際の必要面積より大きく設定されている実態がある。そのような都市では、市街化区域の設定基準に基づいた計画的な基盤整備が担保されているのか疑問である。市街地の基盤整備手法の中で最も問題が大きいと考えられるのは地区計画のみを基盤整備の担保手段とした市街地整備であることから、本研究では、過大な市街化区域編入の実態と基盤整備を目的とした地区計画の関連性を明らかにし、地方都市の拡大市街地への地区計画指定に対して考察することを目的とした。
まず、2003年までに全国で指定されている4096の地区計画を土地利用区分の違いから5つに類型した。その結果343地区が拡大市街地の基盤整備を目的とした地区計画であり、市街化調整区域で地区計画を指定後に市街化区域に編入されたものは10件あることが確認できた。
次に、近年でも大規模な市街化区域の拡大を行なっている35の地方都市を抽出し、市街化区域の拡大割合と、市街化区域内人口密度から都市の類型化を行なった。また、35都市の拡大市街地内の土地区画整理事業と、道路整備を伴う地区計画の割合の空間化を行ない都市類型にあてはめた結果、市街化区域の拡大に伴い市街化区域内の人口密度が増加している都市は土地区画整理事業により、人口の定着に見合わない過大な市街化区域を編入している都市は地区計画により、拡大市街地の基盤整備を担保している傾向を確認できた。
次に、拡大市街地の基盤整備を地区計画で担保している自治体の基盤整備の考え方や、過大な市街化区域編入を行っている理由、市街化区域編入後の変化等を詳細に調査するため、都市類型と地区計画類型の異なる各務原市、上越市、弘前市を詳細対象自治体に選定した。
その結果、市街化区域編入と同時に地区計画を指定している各務原市、上越市では県との線引きに関する認識の違いから過大な市街化区域を編入している。地区計画はこのような過大に編入された市街化域のうち、基盤整備の手段がないところの暫定的な意味で指定されるという問題点が明らかになった。
これは、地区計画で定められる道路に関する規定がその規模と配置のみであり、整備期限や開発主体を定めずとも運用できてしまうという現行制度の限界が招いた弊害であり、問題であると考えられる。
 また市街化調整区域地区計画を経て市街化区域編入した弘前の事例では、基盤整備が地区計画に沿って行なわれており、基盤整備の担保という意味では有効な手段であると言える。

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