大西章雄

線引き導入による関連施策の運用とその影響に関する研究 −開発動向と開発許可条例を中心として−

中出文平・樋口秀・松川寿也

S43年の新都市計画法制定で初めて線引き制度が導入されたが、その後、H13年の改正都市計画法施行により線引きは選択制となり、線引きを廃止する事例が見られるようになった。
 そのような背景の中、人口10万人規模の地方都市としては唯一、山形県鶴岡市が法改正後のH16年5月14日に線引きを導入した。本研究では、当市と行政関係機関や市民等との線引き導入に関する協議経過を整理し、また、線引き導入とそれに伴う開発許可条例等の関連施策の運用実態を明らかにした。さらに、過去の開発が関連施策の運用に与えた影響を整理し、以上まとめとして、線引き導入の際の論点を抽出した。
 当市の国道7号バイパス沿道を中心とした農地では、ほ場整備後の8年経過による乱開発が懸念されていたため、早急に線引き導入が協議された。しかしながら、線引き導入による急な土地利用規制・誘導は都市内の混乱を招く恐れがある事から、柔軟な関連施策の運用が行われた。
 まず、用途地域拡大を伴い市街化区域が指定されが、一部の編入区域には過去の大規模開発地が含まれており、それらを旧用途地域内の残存農地に誘導できなかった経緯が指摘できた。また、市内北西の湯野浜市街地内には空地が散在していたが、市街化区域が指定されて未利用地が多く含まれる事になった。さらに、具体的事業計画が存在する区域では、住居系開発を伴う計画が協議・作成されたが、近接する旧用途地域内の残存農地にそれらの開発を誘導する動きは確認できなかった。
 また、県内他市と比較してかなり柔軟な3483条例が運用された。まず、市街化区域への隣接・近接要件や建築物の連担要件が柔軟に解釈され、市街化調整区域内の全集落に3483区域が指定された。また、明確な3483区域を決定するために道路等の地形地物で区域界が引かれたが、集落宅地内に入り込むような軒下農地が3483区域に多く含められる結果となった。さらに、概ねの3483区域に第三者による開発が可能な用途が指定されたため、集落土地所有者の権利の範囲を超えた運用となり得る事を指摘できた。
 線引き導入の結果、その後の2年間では明確な開発規制・誘導の効果が確認できなかった。また、周辺自治体への開発の流出が確認されたため、広域的観点からの都市計画の重要性が指摘できた。しかしながら、当初の目的である国道7号バイパス沿道での乱開発を防いだ点を考慮すると、新たな土地利用規制・誘導の1ケースとして捉える事ができると考えられる。

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