kan06604

氏名：佐々木沙理

論文題目：プロトン置換型マンガン酸化物による重金属イオンの優先吸着

指導教員名：佐藤一則

概要：
　本研究室ではこれまで、α-オキシ水酸化鉄（α-FeOOH）のFe3+イオンサイトにMnn+イオンを置換固溶したα-(Fe,Mn)OOH粒子が、Pb(II)イオンに対して優先吸着性を示すことを報告してきた。さらに、Mnn+イオンが固溶限界以上含有する場合においても同様の効果を見出した。しかし、Pb(II)イオンの優先吸着機構は明らかでなかった。
　本研究では、α-(Fe,Mn)OOH粒子表面と同じく表面プロトンを有し、配位構造が異なるλ-MnO2に着目した。
　λ-MnO2は、主にリチウム二次電池の正極材料に用いられる、スピネルLiMn2O4を酸性溶液中で処理することによって得られる。酸性溶液中でLi+とプロトンが置換反応することで、スピネル構造を保持したままのマンガン酸化物を作製することが可能である。
これまで、λ-MnO2を用いた重金属吸着に関する報告はされていない。また、α-(Fe,Mn)OOH作製時に不純物相として生成するMnO2粒子についての吸着特性報告も少ない。よって、λ-MnO2粒子を用いた重金属イオンに対する吸着実験を行い、λ-MnO2によるPb(II)イオン吸着優先性について考察するとともに、α-(Fe,Mn)OOHの吸着特性におけるMnO2相の影響について検討した。
その結果λ-MnO2は、水溶液中における混合重金属（Cu(II)、Pb(II)、Zn(II)）イオンに対してα-FeOOHと比較して高い吸着量と、Pb(II)イオンに対する優先吸着性を有することを確認した。また、λ-MnO2における吸着優先順位はPb(II)>Cu(II)>Zn(II)であることも確認した。さらに、λ-MnO2とα-(Fe,Mn)OOHの吸着特性を比較し、λ-MnO2は粒子の表面電位が吸着に大きく影響しているのに対して、α-(Fe,Mn)OOHでは、不純物として生成するMnO2粒子およびMn添加効果による吸着サイトの増加がPb(II)イオン優先吸着に大きく影響していると考察した。

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