福間貴宏

長岡市の実下水を用いた実機スワールの除去性能の解明

小松俊哉 姫野修司

合流式下水道とは、汚水と雨水を同一の管に集め処理する方式であるため、雨天時に処理場で処理しきれない下水を未処理のまま公共用水域に放流している。この未処理下水は合流式下水道越流水(Combined Sewer Overflow、以下「CSO」と記載)と呼ばれ、この改善対策が緊急かつ重要な課題となっている。
そこで、本研究では無動力でCSOを処理することが可能とされているスワールに着目した。スワールは円筒形の槽であり、壁に沿ってCSOが流入し、槽内を旋回することにより渦流が発生し、短時間で汚濁物を中心部に集める渦流式分離装置である。そして、中心部に集まった汚濁物は重力により底部から遮集し、汚濁物と分離した処理水は上部から越流し公共用水域に放流される。そのため、スワールは可動部がなく、エネルギーとメンテナンスが不要なため、雨天時に頻繁に放流されるCSOの対策装置として適していると考えられる。
しかし、スワールは、東京都、愛媛県でCSOの放流現場に採用されたが、スワールを埋設したために、観測が困難であり、除去性能が十分に解明されておらず、海外でも十分に解明されていないため、広く採用されるに至っていない。
そこで、実下水を用いて実機スワールの汚濁物の除去性能を解明することを目的として、流入水質の変化による除去性能の解明と、その評価手法の確立について検討した。
まず、除去性能の観測を容易にするために、直径1.5mの小型の実機スワール本体を下水処理場の施設内に埋設せずに設置した。また、任意の流量で様々な降雨条件を再現可能とした。そして、流量を一定にして、流入水質を変化させて除去性能を観測した結果、SSが高く、沈殿物の割合が多く、沈殿物の沈降速度が速い性状の流入水質ほど除去性能が高くなることを明らかにした。具体的には、流入水のSSが200mg/L、沈殿物の割合が80%、沈殿物の沈降速度が0.6cm/s、スワール内の滞留時間が140s、流入量と遮集量の比が3.0という条件の場合に約50%の除去性能を示す。
これら一連の実証実験の結果を用いて重回帰分析より、除去性能を推定する式を求め、この推定式から様々な条件による除去性能を推定することを可能とした。
これまでのスワールの研究では、現場で刻々と変化する流入水質に対応することが困難であり、除去性能の評価が不十分であったが、本研究では実機スワールへの流入水質を一定とする実験によって、除去性能の解明を可能とする評価手法を見出した。そして、これまで十分に解明されていなかったスワールの除去性能の解明に向けて、新たな一歩を記した。

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