金山麻里香

道路排水の土壌カラム通水試験による変異原性生成能の除去能評価

小松俊哉 姫野修司

将来的な水資源の枯渇を考慮した、都市域内での循環型水利用の構築ため、道路排水を地下へ浸透させた涵養地下水の循環利用が着目されている。しかし、涵養地下水の利用を想定した時点でその質が問題となる。そこで、その質を明確にするため、実際の道路排水を採取し、土壌カラムに通水させる試験を行うことで、涵養地下水を再現することとした。また、土壌による道路排水の浄化能を高くし、さらに長期間持続させる目的で、土壌と活性炭を混合したカラムについても同時に試験を行った。これらの試験で得られた試料を総括的に評価するため、バイオアッセイの一種であるAmes試験による変異原性生成能(MFP)の評価方法を用いた。
まず、涵養地下水の水質のリスクについて相対的な評価を行うための物差しとして全国河川水や各種水試料(道路排水、地下水、降水)の測定を行った。
全国河川水(37河川42試料)のTA100-S9条件でのMFPは、210から20200 net rev./L と大幅に異なる値を持つことが明らかとなり、平均値は3760 net rev./L、中間値は2520 net rev./Lであった。また、MFP/DOCの平均は880であった。長岡市4地点の道路排水のMFP(平均10700 net rev./L)は全国河川水の分布の約90%に位置し、MFP/DOCも約1290と高いことが分かった。一方、地下水の水質はMFPの観点から全体的に良好であり、特に柿地区の地下水(100〜200 net rev./L)は、人的影響由来、またフミン質等の変異原性前駆物質がほとんど含まれないことがわかった。
土壌カラム試験では、内径42 mm、RUN4のみ59 mmのアクリル管を用い、全ての系列において充填試料が50 cmの高さとなるようにした。ブランク、RUN1、4は土壌のみを充填し、RUN2は土壌(高さ45 cm)の上部に活性炭(高さ5 cm)を敷き詰め、RUN3はRUN2と同量の土壌と活性炭を均一になるように混合してからカラムに詰めた。RUN1から4には実道路排水を、ブランクには地下水を、長岡市の降雨量換算で7.0年分通水した。
通水した道路排水のMFPは8300 net rev./Lであり、カラム通水による除去率はRUN1、4が約70%と、道路排水を土壌に通水することでMFPが削減されることが明らかとなった。さらに、RUN2、3は約90%であり、活性炭の効果が見られた。MFP/DOC値はすべての系で後半が低くなった。さらに、RUN3の後半は他の系と比べて低く、活性炭を混合したことによる難分解性物質の除去が示唆された。また、活性炭の投入により、高い浸透率を得られたことから、高い涵養効果が期待できた。土壌のみでの処理の場合、MFPは全国河川水の 分布の25〜50%であったのに対し、RUN2は10〜15%、RUN3は約5%と、かなりの削減がなされた。
以上の結果から、道路排水の土壌への浸透はMFPの削減に効果的であることが分かった。また、活性炭の利用により、全国河川水の分布のかなり低い位置までMFPが削減された。

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