中村 猛利

プロセス破綻した高温UASBリアクターのフマル酸添加による回復効果と微生物挙動解析

大橋 晶良

本研究では、高温UASBリアクターの最大の欠点であるプロセス破綻に関する対策技術を開発
するために、大きく2つのアプローチを採用した。1つは、プロセス破綻からの早期回復化であ
る。もう1つは、微生物モニタリングによるプロセス不調の早期検出化である。また、プロセス
破綻のメカニズムやプロピオン酸蓄積のメカニズムを明らかにするために、リアクターの処理性
能が変化した時における微生物解析についても取り組んだ。

1つ目のアプローチであるプロセス破綻からの早期回復化については、フマル酸添加に着目し
た。プロセス破綻した高温UASBリアクターへフマル酸を添加し、その効果を検証した。その結
果、プロセス破綻からの早期回復化については、プロピオン酸除去率を指標とすると、フマル酸
を1.5日間添加するとBL試験と比較して約2日早く回復し、フマル酸添加による早期回復化の
有効性が示唆された。

 2つ目のアプローチである微生物モニタリングによるプロセス不調の早期検出化については、
LIVA/DEAD法による生菌率に着目し検討を行った。高温UASBリアクターの状態を変化(定常〜
破綻〜回復)させた時におけるグラニュール汚泥中の生菌率の推移を調査した。その結果、
LIVE/DEAD法による生菌率は、プロセスの破綻を検出することが出来ることが分かった。しかし
ながら、リアクターの回復期については、生菌率の回復がリアクター処理性能の回復よりも格段
に早いために、回復期については検出できないことが分かった。

 最後に、リアクターの処理性能が変化した時における微生物挙動解析については、LIVA/DEAD
法による生菌率およびFISH法による菌数割合に着目し検討を行った。高温UASBリアクターの状
態を変化(定常〜破綻〜回復)させた時におけるグラニュール汚泥中の生菌率の推移は、プロセ
ス破綻時に生菌の半数以上がダメージを受け(生菌率50%→20%)、リアクターを回復状態に戻す
と直ぐに回復することが分かった。FISH法による菌数割合の変化については、定常状態とプロ
セス破綻時においてグラニュール汚泥中の各菌数割合の変化は少なく、明確な差がないことが分
かった。

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