谷川大輔



中温無加水メタン発酵槽を用いた厨芥の処理特性評価

大橋晶良



 希釈水を添加しない無加水メタン発酵法は、従来の湿式法と比較して、処理後に発生する発酵液の減量化及び、装置全体の大きさをコンパクト化することが可能となり、コスト面でのメリットを有している。しかしながら、アンモニア阻害の影響をよりシビアに受けてしまうという問題点があり、無加水メタン発酵法に関する知見も少ない。そこで、本研究では、生ゴミを対象とした無加水メタン発酵法の確立及び、その有用性の明確化を目的に実験を行った。

 中温(37℃)メタン発酵槽を用いて、大学の学生食堂から排出された生ゴミの無加水処理を試みた。本研究で用いた生ゴミは、窒素濃度が6000 mgN/kg-w.w.程度であり、脂質含有量が高い傾向が見られた。また、基質中の窒素濃度を調整する為に、一時的にシュレッダー紙を生ゴミ中に混合した。
 約1年間の連続運転を行った結果、生ゴミ単独、及びシュレッダー紙との混合処理において、共に最大COD容積負荷11 kgCOD.m-3.d-1を達成した。その際、生ゴミ単独処理では、アンモニアの蓄積による処理性能の低下が確認された。一方、シュレッダー紙との混合処理では、アンモニアの蓄積を回避することが可能となった。しかしながら、発酵槽内に未分解の紙、及びプロピオン酸が蓄積し、連続運転が困難な状態となった。

 そこで、基質中の窒素濃度調整に代わるアンモニア阻害回避技術として、気相部のアンモニアガスを酸性溶液に吸収させてアンモニアの除去を行うアンモニア吸収塔を設置して、再度発酵槽の連続運転を行った。しかしながら、基質中の脂質含有量が高かった為、発酵槽表層部に油膜が形成され、アンモニアの液相から気相への物質移動が妨げられたことにより、アンモニア吸収塔が十分に機能しない状態となった。その結果、発酵槽内に再度アンモニアが蓄積し、生ゴミ処理性能が著しく低下した。一方、十分機能が発揮できる条件下において、アンモニア吸収塔によるアンモニア除去能力の評価実験を行ったところ、高濃度に蓄積したアンモニアを除去することは困難であるが、低アンモニア濃度状態からのアンモニア蓄積を回避することは可能であることが分かった。

 以上のことから、アンモニア吸収塔を設置し、かつその機能が十分発揮出来る条件下において、低アンモニア濃度の状態から発酵槽の連続運転を行った場合、生ゴミの無加水処理が可能であることが示唆された。

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