高山 大輔

インドにおける新規下水処理システム(UASB+DHS)のO/M評価

大橋 晶良

途上国において低コスト型のUASB(Up-flow Anaerobic Sludge Blanket)の適用が進んでいるが、UASB単独では排水基準を満たす処理水質を得ることは難しい。そのため、我々はUASB後段処理としてDHS(Down-flow Hanging Sponge)の開発を進めてきた。現在、DHSはインドと日本の共同研究において、実下水処理場で稼動するUASBの後段処理に日処理水量500m3/dayの実規模DHSリアクターが導入され、1500日を超える長期連続モニタリングから卓越された連続処理性能が実証されてきた。
本研究では実規模DHSリアクターの維持管理(Operation/Maintenance:O/M)の面から途上国への適用性を評価することを目的とし、冬季における下水温度の低下、流入下水濃度変動に伴う過負荷、そして、途上国の不安定な電力事情や低い技術力により起こる停電や故障に伴う運転停止がDHSの処理性能に及ぼす影響を評価した。また、DHS余剰汚泥の発生量、経済面から従来のUASB後段処理との比較を行った。DHSは、水温の低下に伴ってアンモニア性窒素除去能が若干低下するが、優れた有機物除去能および大腸菌除去能を維持することができた。また、5.7kgCODt/m3/day、0.68kgNH4-N/ m3/dayの過負荷を許容することができ、流入下水濃度の変動に対して高い耐性を持ったプロセスであることが示唆された。さらに途上国おけるトラブルを想定した10日間の強制的な運転停止に対しても、スポンジの高い保水力により汚泥の乾燥が防止されたため、再稼動後には迅速に処理性能が回復することができた。余剰汚泥発生量は、DHSの特徴である高い汚泥保持汚泥能力が発揮され、57日という長いSRTが確保されたことから0.02kgSS/kg除去CODと従来の好気性プロセスと比較して非常に少ない値を得た。そして、経済面では、従来のUASB後段処理よりも維持管理費が非常に安価であり、省エネ型のプロセスであることが示された。従って、DHSは優れた処理性能とともに、運転の持続性を有しており、さらに省エネ型であることから途上国への適応性が高いプロセスであるといえる。



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