新妻大輔

地球観測衛星画像と森林GISデータの整合領域抽出による森林生育モデルの推定

力丸厚

現在日本の森林は、コスト・労力・時間などの問題により生育管理に重要とされる施業があまり成されていない。本研究は、施業をする際に深く関わりのある森林樹冠密度を、FCD(Forest Canopy Density : FCD)モデルを用いた衛星データにより算出し、森林GISデータの林齢情報と照らし合わせ、森林生育モデルを推定することにより、森林状態の把握を効率的に行うことを目的とした。対象林は人工林の大部分を占めるスギとする。
衛星データと森林GISデータを照らし合わせることにより林齢別樹冠密度に従った森林生育モデルを推定するが、従来から問題視されている照らし合わせる際の森林GISデータの更新遅れや衛星データとの位置的なズレというものが存在する。この問題を解消するため、局所領域においてFCD値の変動が大きいエリア、面積が小さいポリゴン、照らし合わせる際のピクセル数、ポリゴン内FCD値のバラツキ、に注目し両データの情報が正確に照らし合わさっている可能性が高いエリアを抽出した。この抽出されたエリアの検証を空中写真により目視で確認した結果、ズレ等による誤差要因の混入やミクセルの影響を除外できる可能性が示唆された。
 この整合されたポリゴンのみを対象として、森林生育モデルを推定した。森林生育モデルは両データが正確に照らし合わされている情報のみで推定したため、スギ林の樹冠密度に関する標準的な生長を現す。一般的に言われている樹木の生長量のピークである林齢20年付近でこの傾向が顕著に見られ、また整合処理無しのポリゴンによって算出されたモデルに比べると全体的にFCD値が上昇していた。これはFCD算出の際に植生に反応するNDVIを使用し樹冠密度を算出しているため、市街地や草地が誤差要因で除外された場合にポリゴン内FCD平均値は減少しないことから、森林以外の影響が除外できたことが示唆された。
この森林生育モデルを基にして、森林GISデータ上で区分けされている各エリアの森林樹冠密度と比較することにより、標準的な生長に比べ高密度であるか低密度であるかの判断をし、施業の中で特に重要とされる「間伐」が必要であるエリアの選定を行った。この選定のために各エリアの間伐優先度を表すマップを10段階で作成し、空中写真により目視で確認したところ、それぞれの森林状態と間伐優先度マップ状況がある程度合致していることが確認された。また、間伐直前エリアの優先度マップ状況を確認した所、すべてのエリアで間伐が必要であるという結果となった。
以上により、衛星データと森林GISデータを使用することにより、森林内部の空間的な情報も含め、広域かつ効率的に把握できる可能性が示唆された。

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