相場 映希

高分解能リモートセンシング画像の領域分割による林分情報抽出に関する研究

力丸 厚

京都議定書が発効されて以来,国内外で森林資源情報の把握が急務となっている。しかし、我が国の林業は外材の輸入による価格低迷から収益性が低下し、経営が困難な状況である。そのため、手入れ・保全のなされない施業放棄林が増えている.また、林業技術者の減少や高齢化が問題とされている現状では、実測による森林資源情報の把握はほぼ不可能である。そこで、リモートセンシング技術を利用した森林資源量把握手法が各種提案されている。
近年、1m×1m以下の高い分解能を持つ高分解能画像が登場し、目視により樹木ごとの識別が可能なほど技術が推進している。しかし、解析方法は従来の低分解能画像におけるミクセルを考慮した平均輝度値を用いた手法が主流であり、ピュアピクセルを有する高分解能画像を十分に活かしきれていないのが現状である。一方で高分解能化により、樹木内の陰影なども敏感に認識してしまい、樹木領域を一塊として扱えないという欠点があり、平均輝度値を用いない解析法、利用法の検討が必要とされている。
本研究では、分解能50cmと1mの高分解能空中写真画像から、樹木領域の空間スケールと樹木の構造に着目して、独立して立木している単木樹冠、単木樹冠が隣接している林冠、林冠内の単木領域を抽出することを目的とした。樹木領域の輪郭を追跡するゼロ交差法、輝度値の類似性の高い領域を統合する領域拡張法、樹木の梢端(中心)を探索し輝度値の勾配に従って領域を分割する分水界法の3手法により、樹木領域の分割を実施した。さらに3手法により分割された樹木領域に対し、樹木特有の形状特徴(面積、真円度)による絞込みを行うことで実態に近い樹木領域の抽出を検討した。
3手法のうち、領域拡張法と分水界法では、樹木領域の分割が目視により認められた。これら2手法の結果に対し、実測の樹木領域の形状特徴を基に樹木領域の絞込みを実施したところ、非樹木領域の除去が行われた。
独立して立木している単木樹冠を抽出した結果、領域拡張法、分水界法ともに形状特徴量解析を組み合わせることで、目視判読結果との合致率が約9割となった。また、抽出した立木位置を目視判読結果と比較したところ、領域拡張法で約5割、分水界法で約6割の認識率となった。林冠領域を抽出した結果、領域拡張法、分水界法ともに形状特徴量解析を組み合わせることで約9割の合致率となった。特に分水界法は分解能1mの画像においても分解能50cmの画像の解析結果と同様な傾向が得られ、空中写真よりも汎用性のあるIKONOS画像等からの樹木領域抽出可能性が示唆された。また、空間スケールや抽出したい形状のパラメータが半自動的に設定可能であり、樹木領域抽出の効率化に繋がることが示唆された。

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