長谷川 裕太

分布型流出モデルの実用化に向けた水文データモジュールの開発と応用
 
陸 旻皎

 近年、「平成16年7月新潟・福島豪雨」をはじめ、中小河川における洪水被害が頻発しており、洪水予測等のソフト対策の必要性が再認識されている。本研究ではソフト対策の一環として分布型流出予測モデルの開発、及びデータモジュールの開発を行い分布型モデルの実用化を図った。
 現在、一般的に多く利用されている予測モデルは貯留関数法を中心とした集中型モデルと呼ばれるものである。集中型モデルは必要とするパラメータが少なく、流出過程も簡単であるため、一般に利用されているが実際の細密な流域地形情報等を考慮して計算を行う分布型モデルにおける予測の方がより実状に即した流出過程を再現できる可能性がある。従来の陸らの分布型水文モデルは計算効率が非常に高い反面、そのアルゴリズム上、予測用途に使うことは出来なかった。そこで、本研究では予測用アルゴリズムとして、タイムステップ毎に計算の行なうことが出来るアルゴリズムを考案し、さらに従来のモデルと連携することで複数ステップ先の洪水予測を行うことの出来る予測モデルを開発した。また、従来の解析作業においてデータ入力の取り扱いは複雑で煩わしい作業であった。本研究ではモデル使用時の実用性を向上させるため、流域内およびその周辺にある観測ステーションのデータを決められたフォーマットで用意しておくことで、流出解析時流域内各メッシュに最適なデータを提供し、簡易な補正も行うことの出来るデータモジュールの開発も並行して行った。従来においては解析期間、使用観測ステーションに応じてプログラムを書き換える必要があった為、モデルを扱う上である程度のプログラミングに関する知識が要求された。だがデータモジュールの開発によりその作業は不要となる為プログラミングに関する知識がなくてもモデルを扱えるようになる。このことはモデルの実用性向上において非常に重要なことである。
 研究成果として、魚野川六日町上流域を対象として仮想雨量、実測雨量に各タイムステップにおいて複数ステップの予測雨量を入力した洪水予測解析を行った。また、データモジュールを用いて観測ステーションを切り替えた流出解析、融雪モデルにも応用したデータ補正機能の確認を行った。

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