吉田 直広

レーザ孔を用いた高力ボルト摩擦接合継手の残存軸力とすべり耐力

岩崎 英治,長井 正嗣

橋梁用鋼板の切断方法として,ガス切断法,プラズマアーク切断法およびレーザ切断法が一般的である.この中でレーザ切断法は,最も加工精度が良く,歪みを少
なくする切断方法として用いられている.レーザ切断は,輪郭切断のほかに,孔あけ加工も可能であるがレーザ加工をしたボルト孔の継手性能が明確でないため実
用化されていない.
現行の道路橋示方書では,主要部材の切断,切削は原則として自動ガス切断により行うものとし,品質が確保された場合に、プラズマアーク切断法あるいはレーザ
切断法などによる自動切断法を用いてよいとされている.また,孔あけについては,所定の径に孔あけする場合は,ドリル又はドリルとリーマ通しの併用によるも
のとし,二次部材で板厚16mm以下の材片の孔あけは,押し抜きにより行ってよいとされている.鋼道路橋の疲労設計指針においては,孔を押し抜きせん断加工した
場合,強度等級を1等級低減すれば適用可能とされている.
これらのことより,レーザ切断による孔あけ加工が,設計で要求される機械的性質などの特性を確保し,継手強度が確保できれば,押し抜きせん断加工同様に用い
ることが可能であると判断できる.また,レーザによる局所的な入熱により孔周りの硬化や,溶損ノッチが入るという問題があるため,これらが継手性能に与える
影響を明らかにする必要がある.そこで本研究では残存軸力とすべり耐力に着目して,レーザ加工の高力ボルト摩擦接合継手への適用が可能であるか検討を行った.
本研究で得られた結論を要約すると以下のようになる.

1)残存軸力試験の結果,鋼種による違い,レーザ加工,ドリル加工の違い,バリ取りの有無による違いはみられなかった.
2)すべり耐力試験の結果,すべての鋼種でレーザ加工による平均すべり係数はドリル加工による値を下回るものはなく,ほぼ同様の値を得ていることからドリル
加工と同程度の機能を有していることが分かる.
3)入熱硬化の大きなSM400B,SM490YBと小さなSM570TMCの間に大きな傾向の違いは見られず,レーザによる入熱硬化の影響は少ないことが分かる.
4)以上の結果より,残存軸力およびすべり耐力に関してレーザ加工のボルト孔はドリル加工のものと遜色のないという結果が得られた.