大谷 啓誠

耐候性鋼橋の腐食評価の客観的定量化に関する研究

岩崎 英治 長井 正嗣

近年,橋梁において建設コストだけでなく維持管理コストも含めたライフサイクルコス
トを縮減し,長寿命化を可能とする新しい橋梁が求められている.こうした中で,ミニマ
ムメンテナンス橋を実現する鋼材として耐候性鋼材が注目されている.耐候性鋼材は保護
性さびの形成により無塗装で使用することができる.しかし,保護性さびの形成によって
鋼材の腐食を抑制させるもので,腐食が止まるわけではなくメンテナンスフリーという誤
解を一部に招いているが,適切な使用方法と適切な維持管理により優れた性能を発揮する
ものである.耐候性鋼橋の維持管理において,さび状態の評価因子としてさび粒子の大き
さや色調がよく用いられ,その代表的なものとしてさび外観評価法がある.これは,鋼材
表面のさび粒子の大きさ,さびの色調を目視により腐食状態を評価する方法で,実用的で
簡便であることから,現在一般的に用いられている.しかし,目視でさびの状態を評価す
るため,客観的に判断することは経験を積んだ技術者でなければ容易ではなく,また調査
毎のばらつきや評価者の主観により左右されてしまうといった問題点がある.

本研究では新潟県内の既設耐候性鋼橋の現地調査により,さび外観評価基準の評価因子
の定量化を行い,それらを入力パラメータとしニューラルネットワークを利用してさび外
観評価の客観的定量化について調べ,今後の維持管理の一助とするものである.以下に得
られた結果を述べる.
1) 測色調査の入力パラメータだけで外観評価レベル2や1を推定することはできない.ま

た,さび厚量も外観評価レベルの推定には適さないことが確認できた.
2)セロテープ試験の入力パラメータを用いたケースで推定を行った場合高い精度を得る

ことが確認できた.
3)外観評価レベルのバランスを整えた場合,各部位の学習データ数によって精度が異なる

ことを確認できた.
4)今後の課題として,各部位の学習データ数によって何故精度が異なるのかを検証するこ

と。また,M1橋以外でも推定することができるのかを確認する必要がある.