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飯島　正泰

深部地盤におけるアンカー体の周面摩擦抵抗に関する研究

海野　隆哉

　ケーソン基礎工法において，沈設精度の向上および沈下促進などを目的として反力アンカーを用いた圧入システムが導入されている．ケーソン基礎は大規模構造物であり，圧入する際には大きな反力が必要となるため，この工法では少ない本数のアンカーで大きな摩擦抵抗を得るためにアンカー体長の長いアンカーが用いられている．一方，アンカー体長の長さは，地盤工学会「グラウンドアンカー設計・施工基準」によると，3～10mが標準とされており，アンカーに引抜き力を与えた場合，テンドンが細いためアンカー体上部と先端では変位量にかなりの差が生じる．アンカー体長が大きくなる程その傾向が顕著である．一方，変位がある限界を超えて増加していくと周面摩擦抵抗が減少し始める．10mより長くしても周面摩擦抵抗はほとんど増加しないというデータが示されている．しかしながら，大深度領域に造成される長いアンカー体に関する研究事例は少なく，その力学的性状は不明確である．本研究では，室内における模擬アンカー（l=1m）の引抜き試験を通じて深部地盤におけるアンカー体の引抜き時の周面摩擦抵抗の挙動を求めた上で，数値計算によって長大アンカー体の周面摩擦抵抗を推定することを目的とし，深部相当土被り荷重を与えた地盤に設置した模擬アンカー体を大変位領域に渡って引抜く引抜き試験を実施した．引抜き試験は模擬地盤条件（砂礫，礫まじり砂，細砂）および上載荷重条件（180kPaまたは360kPa）を変えて行った．
引抜き試験の結果より，模擬アンカー体の形状や模擬地盤条件の違いによって極限周面摩擦抵抗および残留摩擦抵抗の大きさや最大値発生変位にかなりの差異を生じ，上載荷重の大きさによっても大きな違いを示すことが分かった．また，アンカー体を微小変位領域から大変位領域に渡って引抜いた結果，アンカー体表面と周辺地盤との間に生じる摩擦抵抗の大きな領域は，引抜き量が大きくなるにつれアンカー体頭部からアンカー体先端へ向かって遷移するという知見を得た．
一方，FEM解析ソフトを用いた数値解析では，細砂地盤と礫まじり砂地盤においてアンカーの引抜き力が極限に達する領域までは実験結果をうまく再現できたものの，それ以降の大変位領域に関しては実験ではアンカー体と地盤との間にすべりが生じるなど，物理的現象が複雑化しているため今回用いたFEMソフトでは解析が困難で，完全な再現は不可能であった．また，常識的なせん断定数では摩擦抵抗が実験結果より相当小さくなる結果となった．