海老谷 健

一面せん断試験機によるシールド機周りの摩擦特性に関する研究

杉本 光隆

シールド機の掘進時、ジャッキ力に影響を与える要因として、シールド機と地盤やシールド機とセグメントの境界面摩擦抵抗がある。しかし、シールド機周りの摩擦特性に関する研究結果がないのが現状である。

そこで本研究では、ワイヤーブラシの間に詰まっているグリスとセグメントの摩擦特性、および、スキンプレートと泥水の摩擦特性に着目し、一面せん断試験機を用いてシールド機周りの摩擦特性を求めることを目的とする。

摩擦特性に影響を与える因子として、本研究では、材料1(鉄、コンクリート)、鉄の表面粗さ(滑らか、普通、粗い)、材料2(グリス、泥水)、せん断速度(0.2、0.5mm/min)を取り上げた。

一面せん断試験機では、上、下せん断箱の間に0.2mm程度の隙間を空け、せん断を行う。そのため、非塊状試料であるグリス、泥水は、圧をかけると、試験機のすき間から漏出する。そこで、試料の漏出の影響を補正するため、試料漏れの影響を考慮した非線形関数を仮定し、逆解析を行い、残留せん断応力を求めることにした。

その結果、以下のことが明らかになった。

1)試験の再現性:試験装置の摩擦は十分に小さく、試験結果に影響しない。同じ供試体を用いて試験を行う場合は、3回までとする。

2)ピーク強度:グリス、泥水ともにピーク値を示さなかった。

3)せん断速度:グリス、泥水ともに、材料1が鉄の場合、せん断速度は、残留せん断応力には影響しない。グリス、泥水ともに材料1がコンクリートの場合、せん断速度0.2mm/minの方がせん断速度0.5mm/minよりも残留せん断応力が大きくなった。ただし、コンクリートの場合、せん断応力の変化が不安定となっている場合があり、今後、検証が必要である。

4)鉄の表面粗さ:グリス、泥水ともに、表面粗さ y<10mmでは、残留せん断応力にほとんど影響しない。グリスは、鉄の表面粗さが粗い方が、残留せん断応力が大きくなった。

5)材料1:鉄よりコンクリートの方が、残留せん断応力が大きくなった。ただし、コンクリートの場合、せん断応力の変化が不安定となっている場合があり、今後、検証が必要である。

6)試料漏れ:グリス、泥水ともに、拘束圧が高いほど試料の漏出が多くなった。本実験の目的から、試料が漏出しても、漏出した試料により摩擦抵抗が生じない場合や補正できる場合、さらに、拘束圧一定が確保できる場合には、得られた残留せん断応力を用いることができると考えられる。本研究では、材料1がコンクリート、または、材料2が泥水で拘束圧が高い場合は、試験結果の精度が低いと考えられる。