宇野 忠浩

粘性土の非排水強度に与える異方圧密の影響

豊田 浩史

わが国に広くみられる飽和沖積粘土地盤においては,原位置から採取した試料の一軸圧縮強度(非排水強度)を設計に用いることが多い.また,斜面の崩壊を考えたとき,せん断方向は崩壊位置において変化するため,強度異方性の影響を受けることは周知の事実である.しかしながら,試験で異方圧密が非排水強度にどのように影響するかは,限られた条件でしか検討されていない.そこで,本研究では中空ねじりせん断試験装置を用い,様々な方向に対して異方圧密であるK一定圧密を行い,強度異方性が非排水強度に与える影響について検討を行った.
最大主応力方向αc=45(deg),中間主応力係数bc=0と固定し,異方圧密であるK一定圧密を行い,その後最大主応力方向をαs=45,22.5,0,-22.5,-45(deg),中間主応力係数をbs=0,0.5,1.0と変化させて非排水せん断試験を行った.
また,二次元問題として,せん断載荷過程において半径方向ひずみεrを生じさせず,非排水せん断試験を行う非排水平面ひずみ試験も行った.試験条件は最大主応力方向がαs=45,22.5,0,-22.5,-45(deg)である.
本研究で得られた知見を以下に示す.
1.中空ねじりせん断試験において, 様々な方向にK0圧密やK一定圧密を行い,強度異方性の影響を調べることを可能にした.
2.せん断載荷過程における最大主応力方向αsは,せん断載荷過程における応力経路に影響を与える.その傾向は,K一定圧密過程における最大主応力方向αc= 45(deg)との差が大きくなるのに伴い,発生する過剰間隙水圧は大きくなり,非排水強度(変相点)は小さくなる.非排水平面ひずみ試験においても同様の傾向を確認できた.
3.せん断載荷過程における中間主応力係数bsは,せん断載荷過程における応力経路に影響を与える.その傾向は,K一定圧密過程における中間主応力係数bcとの差が大きくなるに従い,非排水強度(変相点)は小さくなる.過剰間隙水圧に関しては,K一定圧密過程における最大主応力方向αcとの差が大きくなるのに従い,中間主応力係数bの影響は小さくなる.
4.最大主応力方向と中間主応力係数が非排水強度に与える影響を,三次元空間に曲面として表した.平面ひずみ試験の結果も,この曲面上にのることがわかった.
5.提案式により三軸圧縮試験を行うだけで,αとbの変化に伴う非排水強度の変化を推定することができる.