名古屋 大輔

室内実験による洪水氾濫数値計算の妥当性に関する研究

細山田 得三

わが国では国土の10%が洪水氾濫区域でありそこに総人口50%,全資産の75%が集中している.そのため洪水により被害を受けやすい状況にある事がいえる.近年のわが国では,異常気象が原因と考えられる治水処理施設レベルを超えた豪雨により洪水災害が各地で頻発している.これから先も洪水災害に対しての警戒が必要であり,被害軽減のためにも早急に対策を講じなければならない.対策はハード(工事を伴う),ソフト(工事を伴わない)の両面が必要であるが,ここでは本研究と関係のあるソフト対策について述べる.
ソフト的な対策のひとつとして,洪水氾濫シミュレーションによる危険箇所の把握や洪水の模擬体験が挙げられる.シミュレーションから洪水氾濫に対する対策や準備を行おうとするものである.しかしながら,洪水氾濫シミュレーションの妥当性について実地に検証することは極めて困難である.そのため,シミュレーションが本当に正しいのかという疑問が残る.既往の研究では,水害後に痕跡水位を調査し氾濫流の最大水深を調べるのが限界であり,氾濫流の時間的変化を調べることは困難である.
本研究では,検証が困難な洪水氾濫数値モデルに関して,1メートル四方程度の小さな室内実験によってモデルの妥当性を検証した.洪水という大規模な自然現象を小さいスケールで考えることにより,模型による室内実験を可能にした.ベニヤ板に穴を開けその穴から水が出てくるように作成した.穴から出てくる水を氾濫流と仮定して水の挙動を調べるものである.実験による氾濫は真上からビデオで撮影し,その広がりの速さを求めるとともに,画像解析処理を用いて流速値を計測した.水の広がり方は実験で得た画像を,計算で得た画像を重ね比較した.流速は合計6地点で実験値と計算値の比較を行った.
実験と計算の比較を行った結果,広がりの速さは概ね妥当であり,流速値は実験よりも計算の方がやや速くなることが分かった.本研究では,流速を計測するために意図的に流れに粒子を入れたがこの粒子が影響して実験値と計算値に誤差が生じたのではないかと考えられる.