厚田 和紀

三宅島の火砕流に対するハザードマップの作成

細山田 得三

火山噴火は,地震同様,私たちに脅威を与える自然災害の一つである.日本には,無人島,海底火山を含め,108の活火山がある.これら活火山の活動が活発になり,噴火その他の異常現象が発生すると,ときには災害をともなうことがある.噴火に伴う異常現象には火砕流,溶岩流,火山泥流などがある.特に火砕流は1991年雲仙普賢岳の噴火の際に発生し,大きな被害を与えたため重要視されるようになった.そして、2000年,三宅島噴火の際にも火砕流が発生した.


 火砕流とは,軽石・スコリア・火山弾・岩塊・火山灰などの破片状火山噴出物(すなわち火砕物)や溶岩片など,高温状態にある大小の噴出物破片が一団となって,高速で斜面を流下する現象である.火砕流は,ガスと,粉体化する岩石破片との高温混合物であり,その高温(一般に1000℃程度まで)と,高速(時速200q以上も稀ではない)のために,事前の避難以外に逃れることは極めて難しく,火山災害の中でも最も危険な現象の一つである.


 雲仙普賢岳での火砕流発生により,危険性が注目され,火砕流の研究が行われるようになった.既存の研究では,1992年,福嶋・鍵山によって火砕流の流体力学的モデルによる解析,サーマル理論に基づく火砕流の数値解析が行われ,2002年には,浅野・福嶋により1次元解析による流動シミュレーションが完成している.そして,2003年には,大澤・福嶋によって2次元解析による火砕流の流動シミュレーションが完成し,より精密に解析できるようになった.しかしながら,この流動シミュレーションを応用したハザードマップなどが作られていない.火砕流がひとたび発生すれば,人為的被害をもたらす可能性がある.そこで,高速で流下する火砕流から身を守るためには,事前の予測結果を示した火砕流のハザードマップ作成が必要である.ハザードマップとは噴火によって火砕流が発生した場合の到達予測結果に基づいて作成された地図である.火砕流の流下範囲とその程度を示し,生活している地域や住まいの危険度を知り避難等に役立てるものである.

火砕流による被害を未然に防止するために,火砕流の流動特性を十分に把握し,流下範囲の予測および周知することが重要である.そのため,本研究では大澤・福嶋の流動シミュレーションを用いた,三宅島の火砕流ハザードマップの作成を目的とした.