中川大介

数値解析による煙型雪崩のハザードマップの作成

細山田得三

日本の気候は世界でも非常に大きな特色がある。それは四季の変化が激しいという点であり、その気候は人々の生活に大きな影響を与えている。日本は中央に大きな山脈が存在するという地形的特長があり、その中央山脈を隔てた日本海側と太平洋側では、季節風や海流の関係などにより、気候に大きな違いが出ている。その中でも特に大きく違うのは冬季の降雪量であり、日本海側は世界でも有数の豪雪地帯となっている。豪雪地帯に指定されている範囲は広く、その箇所の人口は日本全体の人口の約2割を占めている。
また、日本は国土の7割を山林が占めており、集落や構造物が山岳地帯に多く存在している。これらのことから、多くの人が雪崩の危険にさらされているといえる。実際に、集落が対象となる雪崩の危険箇所は全国で20,501箇所が存在する。
日本の中でも特に新潟県は、平成18年には4mを超す積雪を記録するなど全国でもっとも積雪量が多い地域である。また、雪崩の発生危険箇所数も1,500箇所を超え、日本全体の危険箇所の多くを占めている。そして、新潟県の中でも特に積雪量や雪崩の被害が多いのは中越地方である。この中越地方に位置する長岡市の旧山古志村は山間部に位置し、人々は急斜面のすぐ近くで生活しているということができる。積雪量の多さとあわせて旧山古志村は、非常に雪崩の危険性が高い地域といえる。実際にこの地域では、1981〜1990年の10年の間に、集落が巻き込まれた雪崩だけでも4件、2名の死者が出ている。さらに平成16年の中越地震により植生や雪崩防止フェンスに大きな被害を受けており、雪崩の危険性は現在、これまで以上に高まっているといえる。
このような雪崩の被害を未然に防止、あるいは小さなものにするためには、発生する危険性のある箇所、あるいは実際に発生した際危険である箇所を事前に調査や予測を行うことによって知り、それを住民に周知することが重要である。そのために、3次元地形を入力データとし、煙型雪崩の高さ、速度、粒子の濃度、乱れエネルギー、そしてそれらの結果より計算対象領域の雪崩の危険性を解析することが可能である数値シミュレータを開発した。またその数値解析の結果を元に、雪崩の到達する範囲や頻度を実際の地図上に図示することにより、ハザードマップとすることを目的とした。