佐藤 啓明
阿賀野川河口砂州のフラッシュ現象に関する数値解析
細山田 得三
一般的に河川における河口砂州は流下能力の低下を招き,出水時に危険である.一方で通常時は塩水遡上を低減する側面もあるが,それにもまして出水時の危険に対する懸念が大きい.大流量による出水時には,河口砂州が水によって流され河口が拡大する.これをフラッシュ現象と呼ぶ.このフラッシュ現象により河口砂州の流下能力は拡大する.治水安全上,出水時にはフラッシュ現象により,河口幅の拡大,流下能力の拡大が必要であるといえる.しかしながら治水安全上の重要なキーワードであるフラッシュ現象は,大規模かつ短い時間に起こる現象であり,観測なども難しく,そのメカニズムも解明されていない.
本研究の対象である阿賀野川においては,これまでおよそ5,000m3/s以上の流量でフラッシュされていたが,平成14年の台風6号のときには砂州は削られたが,大規模なフラッシュとまではいかなかった.そのため河口閉塞を起こし,下流部では警戒水位を超えるところも出た.このように阿賀野川河口砂州は洪水時には十分に安全な状態とは言いきれないのが現状である.安全でない場合には砂州の管理も考えなければならない.
そこで本研究では河口砂州の適正な管理のキーワードとなるフラッシュ現象を対象として,実地形を用いた平面2次元の数値計算によるシミュレーションにより,フラッシュ現象の定量的な把握,および危険性の比較検討など行うことを目的とする.
シミュレーションには平面2次元の連続式と運動方程式をもちいて流れと水位の計算を行う.また砂の移動は,掃流砂と浮遊砂といった一般的に知られるモデルを用いて行った.計算には上流端の境界条件として横越観測所の流量データ,下流端の境界条件として新潟西港の潮位データを用いた.境界条件はそれぞれ,平成14年台風6号のものと,平成16年新潟・福島豪雨のものを使用した.
また計算モデルについては松ヶ崎水位観測所の水位の観測値と計算値を比較することで検証をおこなった.本研究ではその計算モデルを用いてフラッシュするときとフラッシュしないときの計算を行い,水位などを比較した.
その結果,フラッシュしない場合は,フラッシュする場合に比べ,水位が大きいところで3m以上高く,堤防高さとほぼ同一の値をとる場所もあり,大変危険であることがわかった.またフラッシュ現象により地形は大きいところで5m以上削られるといった,砂の移動についても定量的に把握することができた.