福井 伸之介

画像処理による耐候性鋼材のさび外観評価レベルの判別方法に関する研究

宮木 康幸

近年,LCCの低減という目的で,無塗装で使用が可能な耐候性鋼材を採用した鋼橋建設が多くなっている.耐候性鋼は,表面に緻密な表面酸化膜を生成することで密着性のあるさび層を形成し,さびや腐食の進行を遅らせる鋼材である.
しかし,安定化さび層の形成には環境の影響を受けやすく,架設後の点検・調査が必要である.その方法として,目視によるさび外観評価法がある.これはさびの粒径や色調から,鋼材の状態をレベル1(状態の悪いもの)〜レベル5(状態の良いもの)に評価する方法である.これは簡便に行える調査方法であるが,評価者の主観により評価が左右されるという問題点がある.
本研究では,その問題点を解決する手法として,画像処理を用いたさび外観評価の判別方法を提案した.
そこで,さび粒子の粒径や色調の特徴を,画像処理を用いた事例写真や評価基準から得て,判別の基準を検討した.画像処理の手法としては,メディアンフィルタによる画像平滑化処理,輝度のイコライゼーション処理,HSYによるヒストグラム,RGBのヒストグラムから得た閾値を用いた2値化処理,ラベリング処理を用いた.そして,以下のような評価判別方法を提案した.
1)さび粒子の大きさの平均値,標準偏差が1o2より大きいものとそれ以下のものに大別する.
2)大きいものは,大きさの平均値を,レベル1を3.02o2,レベル2を2.01o2,レベル3を1.52o2,として評価レベルを判別する.また標準偏差を,レベル1を13.54o2,レベル2を3.53o2,レベル3を1.69o2,として評価レベルを判別する.
3)小さいものは,色相の標準偏差を,レベル3を27.4,レベル4を16.4,レベル5を13.4,として評価レベルを判別する.また,彩度の最頻値を,レベル3を23,レベル4を32,レベル5を60,として評価レベルを判別する.
これらの各値は画像処理から算出し,基準値の間は内挿して評価レベルを決定する.
本研究では,この方法を実際のさび画像へ適用した.その結果,目視による評価結果と画像処理による判別結果がほぼ同程度のものとなった.そこから,本研究で提案した画像処理を用いた判別方法は,より客観的で簡単にさび外観評価レベルを判別できたといえる.