藤田 浩成

ニューラルネットワークを用いた路面温度と走行速度予測に関する研究

丸山 暉彦

積雪寒冷地域の冬期道路交通は,降雪などの気象条件およびその周辺環境の影響を受け,車両通行に支障をきたす凍結危険箇所が点在し,輸送機能の低下を引き起こすだけでなく,その地域に居住している人々の社会生活へも影響を与えている.このような影響を最小限にするため,冬期路面管理が行われている.しかし,その主な業務である除雪作業や凍結防止剤の散布などは,それぞれの効果を評価していないのが現状である.さらに近年の社会経済情勢の変化から高度な道路サービスが求められているため,新たな除雪体制の確立や,凍結防止剤散布量・散布タイミングの適正化が望まれている.
本研究では,路面温度と走行速度を凍結・積雪の重要なアウトプットとして考え,それらを予測するためのシミュレーションを構築し,その精度を検証した.
更なる予測精度の向上を図るため,路面温度・走行速度予測とも1kmごとに区切って予測を行い,シミュレーションの入力値には平均0,標準偏差1に正規化した値を用いた.
走行試験は,新潟県南魚沼郡湯沢町国道17号湯沢維持出張所管内において実施した.このデータと、路線内に設置されている定点観測装置による観測データとをあわせて,路面温度・走行速度予測モデルを構築した.予測モデルのアルゴリズムには,ニューラルネットワークを用いた.ニューラルネットワークは,過去の経験データに基づいて適切な予測値を導くものである.
路面温度の予測結果より,サーマルマップ(1路線における路面温度分布)を描き,路線の凍結危険箇所を抽出し,各地点の凍結防止剤散布量を適正化することが可能であると考え,実際の業務における検討として本研究の実用性を示した.また,走行速度の予測結果より,除雪に関する路面評価方法である路面管理サービス指数RMSI(Road Management Service Index)および,路面管理サービスレベルを算出することができる.この路面管理サービスレベルと路面温度予測および地形的な要因より得られた凍結危険箇所を用いて,冬期路面を評価することができ,道路利用者の意思を反映した道路サービスの提供が可能であると考えた.
最後に,本研究の冬期路面管理システムの問題点について言及し,今後の課題を示した.