日和 裕介

樹脂補強型開粒度アスコンの埋設ジョイント基層への適用性に関する研究

丸山 暉彦

道路橋の伸縮装置は前後の舗装を分断しているため,騒音振動の発生や車両走行性の低下などの問題を引き起こしている.この解決策としてノージョイント化工法が進められている.舗装分野におけるその工法の一つに,埋設ジョイントを用いる方法がある.本研究では,伸縮分散型埋設ジョイントを対象として,基層部に使用する既存のグースアスファルト混合物の抱える問題点の解消を目的に,コスト縮減,煩雑軽減,性能改善に着目し,樹脂補強型開粒度アスコンの適用性について検討した.
埋設ジョイント舗装体に作用する変形は,橋梁の動きに起因する強制的なものである.その変形の影響を検討するために本研究では基礎的な材料強度試験を実施した.材料強度特性の評価法として,埋設ジョイント特有の2種類の変形作用に着目した.一つは,主桁の温度変化に起因する橋軸方向の伸縮変位に対する強度特性の評価を行った.伸縮変位に対する評価として,供試体の軸方向に引き伸ばす直接引張試験を実施することにより軸方向の変形に対する破壊抵抗性,伸縮性の定量的評価を行った.伸縮性の評価をさらに合理的に行うため,埋設ジョイントモデルを使用し,埋設ジョイントメーカーが実際に用いる経験則と,弾性理論とクーロン摩擦の変形式を用いた.その式に,一番厳しい環境条件を入力し目標ひずみ量として評価を行った.また,直接引張試験結果から緩和弾性率を算出し時間温度換算則を適用することによって,実ひずみ速度におけるひずみ分散性能の評価を行った.
次に,活荷重に起因する変形量が非常に微小で早い速度を有する回転変位に対する強度特性の評価を行った.回転変位に対する評価として,静的曲げ試験によって舗装体の柔軟性,基本的物性の評価を行い,繰返し曲げ試験を実施することによって,動的な回転変位に対する耐久性の定量的評価を行った.
材料強度試験から得られた知見を統括すると,埋設ジョイント舗装体に樹脂補強型開粒度アスコンを使用した場合の性能改善については,直接引張試験の結果から伸縮性,ひずみ分散性能の向上が確認され,静的曲げ試験と繰返し曲げ試験の結果からは,柔軟性,耐久性の向上が確認された.また,コスト縮減,煩雑軽減の観点では,樹脂補強型開粒度アスコンの材料は一般的な舗装材料を使用し,施工については樹脂を流し込むだけの単純作業のため作業の煩雑さは解消され,材料以外の付加的なコストも解消された.以上を総合すると,樹脂補強型開粒度アスコンは,埋設ジョイント舗装体への適用性が高いことが確認できた.