櫛田卓也

ジャイレトリーコンパクタの締固め特性とマーシャルランマとの比較に関する研究

丸山暉彦


これまで,我が国のアスファルト混合物は,マーシャルランマで突き固めて供試体を作製するマーシャル設計法によって配合設計が行われてきた.しかし,あくまでも経験則に基づいた方法であり,配合設計で得られた最適アスファルト量と供用性との関係が明確になっていない.また,マーシャルランマでの突固めは鉛直方向の衝撃による圧縮作用で突き固めるものであり,実際の車両走行による圧密作用と大きく異なるという問題点が指摘されている.

これに対し,米国で1990年代に提案されたSuperpave (Superior Performing Asphalt Pavements)設計法がある.現在,米国,カナダはもとより,アジア諸国でも運用が開始されている.Superpave設計法の最大の特徴は,アスファルト混合物の締固め特性を評価する手法としてSuperpaveジャイレトリーコンパクタ(SGC)が採用されたことである.SGCはアスファルト混合物にニーディング作用を与えながら締め固める機構であり,供用を開始してからの車両走行による混合物の圧密作用に近い締固め特性を有している. 我が国ではかなりの数のSGCが関係機関に導入されているにもかかわらず,SGCが実際の配合設計業務に活用されていない.我が国でSGCが普及しない原因は,我が国において運用に関する明確なガイドラインが提案されていないことにある.配合設計は,供用後の交通荷重を受けて空隙が減少した状態を想定して行うものである.したがって,SGCを活用するための基準を新たに作成するためには,供用後の実舗装データが必要になるが,これは非常に困難である.また米国AASHTO(American Association of State Highway and Transportation Officials)ではSGCでの配合設計が規定されているが,米国と我が国では交通荷重の考え方も設計期間も大きく異なるためSuperpave設計法をそのまま流用することはできない.我が国ではマーシャル設計法は長い歴史があり膨大な実績があることから,SGCを導入する場合にある程度マーシャル設計法を踏襲し,我が国に合わせた基準を策定する必要があると考える.

そのため,現行のマーシャル設計法にSGCを導入できるように検討した.マーシャル設計法で基準混合物を決定し,これと同等の混合物を作製できるSGC旋回数を様々な粒度について検討した.マーシャル設計法に準拠した場合の設計旋回数(Ndes)はB交通およびC交通に対して,それぞれSGC締固め旋回数は40回,60回が適当であることがわかった.そして,現在の配合設計の評価指標・基準はマーシャルランマに対してのものであるので,SGCを使用してNdesで締め固めた場合の評価指標・基準についてSuperpave設計法を取り入れて検討した.