大久保美里

経年劣化による改質バインダおよび改質アスコンの性状変化に関する基礎的研究

丸山暉彦


 アスファルト舗装は,屋外の自然環境下に長期間暴露されることにより,アスファルトコンクリート(以下,アスコン)中のアスファルトバインダ(以下,バインダ)の性状が経時的に変化する.これを経年劣化と称し,経年劣化はアスコンの長期供用性や耐久性に大きく影響を及ぼすものと考えられている.したがって,舗装の長寿命化を目指すためにも,経年劣化を設計法や評価法に考慮することが必要である.しかしながら,我が国の配合設計においては経年劣化によるアスコンやバインダの性状変化に対する評価や対策が具体的に行われていない.このため,経年劣化による影響を定量的に把握し,設計法や評価法に反映する手法を構築することが求められる.また,我が国のアスファルト舗装材料の現状として,改質アスファルトバインダ(以下,改質バインダ)の使用が増大している.それにも関わらず改質バインダに関しては,経年劣化に関する包括的な知見が未だ明らかにされていない.

 そこで本研究では,これらの問題点を解決すべく,まずは経年劣化に対する基礎的知見を得ることを目的とし,恒温槽による加熱促進劣化を2とおりの期間(4日,8日)施した劣化アスコンに対して繰返し曲げ試験を実施して,劣化の進行に伴うアスコンの物理的性状の変化を評価した.また,劣化アスコンから回収したバインダ,および促進劣化を施さない新規アスコンから回収したバインダに対して,組成成分分析試験,従来のバインダ性状試験,およびSHRPのDSR試験を実施して,バインダの化学,物理的性状の変化について評価した.その際に,バインダの違いを考慮するために改質バインダ2種類(改質アスファルトU型,超重交通用改質アスファルト)とストレートアスファルト1種類を比較した.同時に,SHRPの方法によって促進劣化を施したバインダと本研究の方法で促進劣化を施したアスコンから回収したバインダの性状値を比較して,劣化程度の差異を確認することにより,促進劣化方法についても検討を加えた.

 以上より,改質バインダは改質材(SBS)そのものの効果やSBSの劣化の進行に伴う低分子化によって組成成分や粘弾性的な性状が変化し難く感温性が小さい.このため,長期的にも改質バインダが有する弾性的な性状を保ち続ける.これに反映して,アスコンの場合においても,劣化や温度の上昇に対する強度の低下が小さく,長期的にみても改質アスコンは耐久性に優れることがわかった.また,改質バインダの化学,物理的性状および改質アスコンの物性を相互に評価するにあたっては,DSR試験における複素弾性率G*や損失正接tanδ,針入度指数PIといった指標が有効であること,本研究における促進劣化方法では酸化の程度が小さいという知見が得られた.