遠藤祐介

線引き都市計画区域と隣接する緩規制地域における土地利用の現状と課題について
〜松本都市圏を対象として〜

中出文平 樋口秀

 

 わが国では、1968年(昭和43年)の新都市計画法の制定に伴い、市街化の制御を目的として区域区分制度が導入された。区域区分制度を導入した都市では、計画的な都市計画を行っている。しかし、その周辺の緩規制地域では無秩序な開発が進み、不連続な土地利用規制のため、広域的な視点からみると計画的で一体的な都市を形成することは困難である。これらの背景のもと本研究では松本都市圏を対象として、このような線引き都市計画区域に隣接する緩規制地域の土地利用の現状と課題を明らかにし、今後の土地利用に対して、提言することを目的とする。

 まず対象市町村の概要として、対象市町村の都市計画に関する法制度の概要、世帯数・農家人口推移を明らかにした。次いで、対象市町村の土地利用動向として、交通量、大規模開発動向、商圏動向、農用地区域の変遷を分析し、その結果から、詳細対象分析地区を選定した。選定した地区に対して、開発の実態を明らかにするため、農地転用データから開発の年次、用途、種別に分け空間化し、同時に定量的に把握した。この結果を元に合併、都市計画区域の指定について、新たな土地利用規制について等のヒアリング調査を対象4市町村の行政担当者へ行った。

 本研究で明らかとなった問題点と課題として、都市計画法と農振法が完全に独立していること、隣接した緩規制地域と市街化調整区域とでは、開発の質も量も違うため、広域的な視点で土地利用を行うためには、同レベルの土地利用規制が必要であること、都市計画区域や用途地域を指定しただけでは、農振白地部分での開発が進み計画的な土地利用を行うのが困難である。これらの問題点と課題から以下の提言をした。
(1)都市計画法と農振法の連携強化−両方による厳格な運用が望まれるが、特に都市計画による土地利用規制ができない地域では、農振法・農地法による農地転用後の用途等に対しての厳格な運用が必要である。(2)都市計画区域の指定−広域的で計画的な土地利用を行うためにはやはり、法的強制力の強い都市計画区域の指定の必要性がある。(3)特定用途制限地域による白地地域の強化−白地部分に対して土地利用規制を行うために、特定用途制限地域をかけ、規制の白地地域を無くすことで、白地地域を強化する。