岩 幹子
用途地域の縮小に関する研究
中出文平・樋口秀
地方都市では、人口が大幅に減少しており、大きな問題になっている。このような状況の中で、都市計画の視点から見れば、今後の人口減少社会に合わせたまちづくりへの対応の一つとして、用途地域を縮小させることが望ましいと考えられる。
そこで本研究は、用途地域の縮小を行っている自治体を対象として、縮小経緯、抱えている問題点や傾向、人口フレームと用途地域の関係を検討し、今後の用途地域のあり方を考える事を目的とする。
全国の非線引き自治体で用途地域を指定している760自治体の内、用途地域縮小自治体は19自治体であった。対象19自治体を分析した結果、用途地域の変更は縮小、新規編入、用途地域種の変更を同時に行う事が多い事がわかった。この事から、用途地域を縮小させるのはその地区の状況だけが原因ではなく、周辺の土地利用と調整する為に行われる事もあると言える。また、今後さらに人口が減少していく中で、用途地域と人口のあり方について考えていく事が必要であると考え、人口フレーム設定を分析した結果、人口フレームは過大に設定され、見直しもなかなか行われていない事がわかった。
次に、詳細分析を行う加賀市、旧宮崎村、美濃市、恵那市の4自治体を、都市計画区域内人口変動を指標として選出し、ヒアリング、現地調査を行った。ヒアリングを行った結果、用途地域、人口フレームの過大設定が明らかとなった。用途地域の変更を行う際には人口フレームが設定される為、用途地域と人口は大きく関係していると言え、今後さらに人口が減少していく中で、用途地域と人口フレームをリンクさせる事が必要である。さらに、用途地域の縮小箇所では、その後の開発防止策として、農業振興地域(農用地区域)に新規編入が行われていた。基本的に新規開発は起こっていなかったが、いくつか開発が起こっており、縮小箇所のその後の厳しい開発防止策が必要である。しかし、開発が行われた地区は、開発圧力が高まっていたにも関わらず、開発は縮小箇所の端部分だけであった。その為、用途地域縮小時に農用地区域への新規編入を行った事で、乱開発が防止できているのではないかと言え、新規開発を防ぐ為の有効な手段の一つと言える。しかし、開発が起こっている事は事実であり、他の対策も講じる必要なのではないかと言える。他の対策としては、農林漁業等他の土地利用計画との調整を行う事が有効だと考えられる。