中野 孝紀
7.13水害における防災意識と避難行動に関する研究
松本 昌二,佐野 可寸志
近年、地震、台風や集中豪雨による水害などの自然災害が多発している。平成16年においては、台風の上陸数が10にもなった。そして、「南海地震」、「東南海地震」などの発生が懸念され、集中豪雨が増加しているように、今後も、地震、水害は起こると考えられる。これまでの自然災害による犠牲者は、高齢者の占める割合が高くなっており、喫緊の課題であると考えられる。
また、過去の災害を教訓として、地域連携の必要性が叫ばれている。「自分達のまちは自分達で守る」との考えを基にして、地域防災の一役を担うものとして、自主防災組織が挙げられる。平成7年の阪神・淡路大震災を機にその結成数は増加した。しかし、近年では、組織の形骸化を危惧する声が聞かれるようになっている。
そこで、本研究では、防災・減災対策の考え方である「自助・共助・公助」に基づいて、まず自助の部分として、7.13水害時における、見附市、中之島町の被災地域住民の平時の防災意識、当日発令された避難勧告などの情報提供による避難行動の実態をアンケート調査により明らかにする。これにより、今後の水害時にどのような対応を行えば減災が可能となるかとの観点で分析を行う。結果、避難行動に影響を与えるものは、大きく3つに分類できた。それは、浸水被害の状況、避難勧告などの避難情報の入手状況、平時の防災意識である。また、当該地域においては、浸水被害の程度、避難情報が避難行動に与える影響が大きいということを、数量化理論U類を用いた予測モデル、共分散構造分析により明らかにした。
次に、共助の部分として、水害などの災害時に活躍が期待される自主防災組織について、長岡市の浦瀬町自主防災会をケーススタディとし、現状の把握、今後、強化すべき活動について検証した。結果、平日の昼間は、高齢者が多く、要援助者だけの世帯もあり、夜間より危険な状況になっており、時間帯別に援助体制の構築が必要であること、自主防災会で行っている活動の広報が重要であること、すなわち、自主防災会は何をしているのか、活動にどういったメリットがあるのかを住民に周知することが重要であること、他の自主防災組織との情報交換、ネットワーク化が必要であるということを指摘した。
以上より、自主防災組織などの活動を活発に行うことにより、住民が主体的になり平時の防災意識を高める努力を行うことが、将来発生する水害の際には、被害を小さくできる(減災)ことを示唆した。