崎村武秀

アクティビティダイアリー調査データを用いた高齢者の交通行動分析とDRTの導入可能性

佐野可寸志,松本昌二

現在、我が国では他国に例を見ない急速な少子高齢化が進んでおり、深刻な社会問題となっている。高齢者が社会の中で孤立することなく、自立した生活を営むにあたって移動手段の確保は欠かせないことである。高齢者にとって身体的条件や公共交通のサービスレベルが原因となり、交通需要が潜在化することで、高齢者のQOLの低下や社会活動・経済活動に大きな影響を与えており、既存の公共交通機関を利用できない高齢者のための新しい交通手段としてDRT(Demand Responsive Transit)導入の必要性が高まってきている。そこで本研究では、高齢者の交通行動実態を把握し、DRTの利用者数の推計を行うことによってDRTの導入可能性について検討する。
長岡市に居住する高齢者を対象として1週間の外出状況調査を行い、高齢者のトリップ数予測モデルを構築し、年齢や性別、居住地などの個人属性が高齢者の交通行動に与える影響を定量的に示している。外出目的に関しては買物が外出活動の中心となっており、通院に関しては男女とも年齢が上がるにつれて増加していることが分かった。交通手段は男性ではやはり、自動車の運転が可能な年代では自動車利用が多いことが確認できる。そして自分以外が運転する自動車での移動については自動車の運転免許の保有状況と関係しており、男性ではほとんど無いが、女性では3割程度を占めていることが分かる。
DRTの利用意向分析を行い、利用料金や乗車場所までの距離などサービスレベルごとの利用限界水準を明らかにした。DRTを含む交通手段選択モデルを構築し、交通手段選択に与える影響を定量的に把握することができた。自動車に関するパラメータでは、年齢と性別による影響が大きいことが分かる。男性のほうが自動車の運転は多く、女性では同乗が多いところなど実際をうまく再現できているといえる。公共交通機関のパラメータは全てが負の値となっており、高齢者にとって公共交通機関が利用しづらいことを示している。DRTのパラメータでは男性よりも女性で、なおかつ高齢者の中でも比較的若い方で効用が高いことが確認できる。そして交通手段選択モデルの推定結果から北部地域を対象としてDRTを導入した場合の年間収支を算出した結果、利用料金が300円の場合には年間1千万円程度の補助金により、DRTが導入できる可能性があることがわかった。