和田 牧子

酸化鉛を含まないリン酸塩系低融点ガラス

松下 和正

低融点ガラスはエレクトロ二クス分野、オプトエレクトロニクス分野で幅広く使用されており、その使用目的から低い熱的性質や優れた化学的耐久性などが求められている。酸化鉛はこれらの特性を満足する優れた性質を持つことから、従来の低融点ガラスの多くに多量に含まれていた。しかし、近年、鉛の有害性が問題視されており、世界各地で鉛の規制が強化されている。そこで、酸化鉛を含まない低融点ガラスを開発することが急務である。本研究では、低融点ガラスの一つであるリン酸塩系ガラスに着目し、酸化鉛を含まない新しい低融点ガラスを開発することを目的とした。

 ガラスの組成系を決定するため、基本組成をP2O5-ZnOとし、ZnOと第3成分(Li2O,Na2O,BaO,Bi2O3,SiO2,CeO2,PbO)を置換し、比較した。その結果、一般的に耐水性が低いと言われているリン酸塩系ガラスに多量のCeO2を添加することにより、著しく耐水性が向上することが分かった。そこで、第3成分にCeO2を選択し、P2O5-ZnO-CeO2系ガラスにおいてP2O5,CeO2の含有量を変化させることで、さらに低融点ガラスとしての可能性を追求した。P2O5-ZnOの2成分系ではP2O5の含有量の増加に伴いガラス転移温度は減少するが、耐水性は大きく低下した。しかし、P2O5-ZnO-CeO2の3成分系においては、CeO2の添加量の増加により耐水性が大きく向上する変曲点を示し、P2O5の含有量の増加に伴いガラス転移温度が低下し、さらに耐水性を向上させることに成功した。CeO2の添加量の増加による変曲点はガラス転移温度やイオン充填率などでも示しており、これはCe4+がCe3+に還元したためだと考えられる。耐水性の向上にはCe4+の影響が大きいと考えられ、CeO2の添加量が増加してもガラス転移温度が大きく上昇しないのはCe3+による影響であると考えられる。また、この変曲点は全ての物性でZn/CeQ1のときに示した。P2O5の含有量が多い組成でZn/Ce=1に固定し、ガラス転移温度の低下に効果的な第4成分を添加することにより、新しい低融点ガラスになると期待できる。

 以上のことから、P2O5-ZnO-CeO2系ガラスで耐水性に優れるリン酸塩系低融点ガラスを得られる可能性を見出した。