酒井陽介
担体投入型膜分離活性汚泥法の長期連続実下水処理による運転評価
小松俊哉,藤田昌一,姫野修司
膜分離活性汚泥法は,処理能力の向上のみならず,施設容量の縮小や現在問題となっている病原性微生物の高い除去能を有する高度下水処理技術の一つである.しかし,膜分離法では膜の目詰まりを抑制するために,膜面の曝気洗浄を行なっており,他の処理法と比較して曝気強度が非常に強く,曝気にかかる費用が維持管理費を引き上げているという問題がある.
本研究室ではこれまで,間欠曝気を行ない1槽で硝化脱窒を行なうことが可能な“1槽間欠曝気式硝化脱窒法”の研究を行なってきた.この処理法は反応槽を1つとしているためコンパクトであり,間欠曝気であるため連続曝気と比べ曝気コストが抑えられる.さらに,反応槽内への担体を投入することに注目し,担体を反応槽内に添加すると,担体内に微生物を高濃度に保持することができるため,生物処理性能が向上することが確認され,担体が膜面に衝突し,膜面に付着・堆積した物質を剥離する効果があることも分かった.そのため,従来の曝気による膜面付着物剥離を担体の衝突によって行なうことで,曝気強度を弱め,曝気コストの削減が期待できた.
本研究では,実下水(沈砂池越流水)を用いた膜分離活性汚泥法装置の長期的な連続運転を行ない,担体添加の有無および異なる曝気線速度の条件で約250日間の膜透過性能,有機物および窒素・リン除去能から評価し,間欠曝気と担体による膜面付着物剥離効果によって,さらなる低コスト・省エネルギー化を実証することを目的とした.
連続運転は,Run1:曝気線速度0.4m/minで担体無し,Run2:曝気線速度0.2m/minで担体有り,Run3:曝気線速度0.4m/minで担体有り,Run4:Run3と同条件かつ凝集剤添加(終盤のみ)の4系列で行なった.その結果, 有機物除去能においては全RunでBOD除去率は97%以上,TOC除去率は91%以上であり,目標処理水質を達成した.窒素除去能において,T-N除去率はRun1:53.3%,Run2:70.6% ,Run3:68.3%であり,担体ありのRunにおいて,良好な窒素除去能であった.リン除去能において,T-P除去は生物処理のみのRunでは目標水質である1mg/L以下は達成できなかった.一方,短期間の運転だったものの,凝集剤を添加したRun4では0.06mg/Lを達成し,処理水の色度除去能も高いことが分かった.膜透過性能においては,膜透過流束の平均はRun1:0.19 m/day,Run2:0.24 m/day,Run3:0.20 m/dayであり,薬品洗浄回数もRun1:3回,Run2:1回,Run3:3回であったため,もっとも曝気量が少ないRun2の膜透過性能が長期にわたり最も高く維持されていた.また,Run1はRun3に比べ,ろ過抵抗の急激な上昇が見られ,担体による効果が確認された.
以上に示すように,担体を投入することで曝気線速度を大幅に削減しても優れた運転性能であることが実証できた.