大羽澤 圭佑

長期連続観測に基づいた流出解析モデルによる長岡市の合流改善対策案の効果と検証

藤田昌一,小松俊哉,姫野修司

近年、日本国内で合流式下水道からの越流水(CSO)問題が重要視され、その改善対策が急務となっている。
このCSO問題を解決すべく本研究では、長岡市公共下水道の合流区域(研究対象区域は約150ha)に観測小屋を設置し、オートサンプラー、流量計、雨量計も設置し、関東町吐き口からのCSOを約20ヶ月間連続観測した。しかし、越流期間すべてにおけるCSOの水質測定を毎回行うことは困難であり、この期間の水質を把握するために、本研究では、流出解析モデルの1つであるMOUSEを用いて流出解析シミュレーションを行うこととした。
流出解析を行うにあたって、まず、研究対象区域の現況をモデル化する必要があり、MOUSEへ研究対象区域の現況施設におけるノード(人孔)データやリンク(管渠)データ、面積データや晴天時汚水流量や水質の変動率などを入力し、流出解析シミュレーションを行った。
一方、現在の長岡市の正確な流出率が把握されていないため、長岡市の計画における流出率を参考に80%で流出解析シミュレーションした結果、流量の計算値が実測値よりも倍近く大きくなり、雨水流出のメカニズムの解明が必要となった。流出解析は、観測降雨量データをMOUSEのモデル上に降らせて雨水流出現象を表現するため、その計算結果を評価するには測定機器の精度が重要である。そこで、その原因を探るべく、最初に可能性として考えられる、雨量計の精度確認実験を行ったところ、気象庁が観測する雨量データと高い相関関係を示したことから高精度であることが確認された。次に、流量の計算値が実測値より大きかったことから、実際には雨水がどこかで漏れている可能性が考えられた。そこで、CSOが河川へ放流されているのか調査を行い、さらに雨水が直接河川へ放流される部分分流の区域が存在するかを実際に現地へ行って調査をした。その結果、関東町吐き口の上流側に1つの吐き口(川端荘吐き口)が存在し、そこからCSOが河川へ放流されていることを確認した。さらに、研究対象区域には雨水のみを河川へ放流する吐き口がいくつも存在し、各吐き口が受け持つ雨水排水面積を概算した結果、約20haが部分分流区域として雨水を直接河川に排除していることが分かった。これら現地調査より分かった情報を、MOUSEのモデルへ入力し改めて研究対象区域のモデル化を行い、流出解析シミュレーションを行った。その結果、流出率60%として計算したときに計算値と実測値の流量が一致し、これは、当該区域の流出率としては、土地利用から見てほぼ妥当な値であることから、把握されていなかった研究対象区域の流出率を解明することができた。
この結果を基に、雨天時における水量・水質の流出解析を行い、研究対象区域のモデル化に成功した。これを基に、「CSOの越流回数を半減する」という国の方針のために必要な貯留池の容量を決定した。また、この流出解析モデルを用いて20ヶ月間の越流負荷量を半減させるための貯留池の必要容量を算出することが可能となった。