上田 孝司

熱分解−ガス改質による廃棄物・バイオマスからのエネルギー回収

藤田昌一, 小松俊哉, 姫野修司

近年、化石燃料の大量消費により二酸化炭素排出量は年々増加傾向にある。そこで平成14年の新エネ法施行令の一部が改正され、バイオマスが初めて新エネルギーとして認知された。これにより同年12月にバイオマス・ニッポン総合戦略が閣議決定され、バイオマスの利活用促進の取り組みが活発となり、廃棄物およびバイオマスを有効利用する廃棄物発電が行われている。しかし、廃棄物発電は大規模焼却施設では行われているが、大部分を占める小規模焼却施設において従来の技術では経済性確保が困難なことから発電がほとんど行われていない。(2002年度実績:162万kw、2010年度導入目標:417万kw)そこで小規模焼却施設において、廃棄物・バイオマス発電を可能とする熱分解−ガス改質技術に着目した。
本研究では、廃棄物およびバイオマス発電に利用可能な燃料性の高い熱分解ガスの生成を目的とし、様々な熱分解ガス改質条件(温度、時間、改質剤投入量)の検討を行い、熱分解ガスの組成と得られた発熱量を評価し、効率的な熱分解ガス改質条件の検討を行った。
熱分解ガス改質条件は熱分解温度を400 ℃、500 ℃、600 ℃とし改質条件は@窒素のみ、A窒素+水蒸気、B窒素+酸素、C窒素+水蒸気+酸素、として熱分解ガス改質実験を行った。
その結果、下水汚泥による熱分解ガス改質実験において、@では熱分解温度600 ℃において熱分解ガスの発生量、熱分解ガスの低位発熱量および、汚泥あたりから発生する熱分解ガスの低位発熱量が最も高いことから熱分解温度は600 ℃が最適であると確認した。改質条件として、Aでは水蒸気の改質効果が確認されなかったが、Bでは部分燃焼反応により熱分解生成物の発生量が増加した。しかし、酸素の投入量の増加により二酸化炭素も増加することから、投入量は1 / 5 mol / g-sludge 〜 1 / 4 mol / g-sludge 程度が効率的に熱分解生成物を回収できることを確認した。Cでは、部分燃焼反応により炉内温度が約100 ℃程度上昇したことから、水性ガス化反応に必要な熱エネルギーが供給されたことが予測された。窒素+水蒸気+酸素において酸素投入終了まで水素および一酸化炭素の発生が促進され、水蒸気の投入量は1 / 2 mol / g-sludgeで最も良好となった。
次に、下水汚泥で得られた熱分解ガス改質条件をRDFに対応し、可燃分およびプラスチック類の含有割合が最も多い2種類のRDFを用いた。その結果、可燃分が多いRDFでは、熱分解反応よりも、部分燃焼反応が優位に起こり二酸化炭素の発生が多くなった。次に、プラスチック類の含有割合が高い場合、タールの生成割合が増加し熱分解ガスの低位発熱量およびRDFあたりの低位発熱量の増加が確認された。しかし、下水汚泥から得られた熱分解生成物よりも減少する結果となった。

 以上より、熱分解工程と改質工程を通して最適な熱分解ガス改質条件を検討した結果、改質効果としては水性ガス化反応よりも、部分燃焼反応の方が改質効果が高いことを確認した。また、熱分解ガスの組成と熱分解ガスの発熱量から評価を行った結果、熱分解温度600℃、水蒸気投入量1 / 2 mol / g-sludge、酸素投入量1 / 4 mol / g-sludge において最適であることを明らかにした。