宮崎 大

嫌気性消化による厨芥からのメタンエネルギー回収技術の開発

指導教官 大橋晶良 原田秀樹

 

食品リサイクル法などが施行される中で現在、厨芥類の有効活用技術として主として堆肥化が利用されている。
しかし、資源化物の利用先には限界があり今後の厨芥類の資源化を推進していく上では、生ごみをメタン発酵させる
バイオガス化技術の活用が注目されている。またメタン発酵技術である湿式法では後段の廃水処理にコストがかかる
ために必ずしも普及しているとは言い難いのが現状である。そのような事を踏まえて本研究では、後段の廃水処理へ
のコストを下げるために生ごみを無加水で処理する新規メタン発酵リアクター(CSTR)の開発を行った。そして、発酵
特性を把握するために128日間の連続運転を行った。新規リアクターには、乾式メタン発酵では問題となるガス溜まり
を解消するための特殊な攪拌機が備え付けられておりそれによって正確なガス量を測定する事が出来た。

原料は実際排出されている厨芥をスラリー状にしたものを用い、Fill and draw 形式で投入と引抜を行っていった。
その結果、生ごみ単独で分解させると生ごみ自体の分解は良好に行われたために、槽内の汚泥中の固形分が入れ替わり
含水率は上昇していった。また生ごみの総ケルダール窒素は5000 mgTKN/kg-w.w.以上あったため連続実験中においてア
ンモニアの阻害が及んでいる事が観察された。このような事から乾式メタン発酵では原料によって大きく発酵特性が異
なり原料の選定が最も重要な制御ポイントであることが考えられた。そのため、原料のC/N比を重要視し、副資材添加を
することが制御技術の一つではないかと考えられた。本研究では紙と生ゴミを重量比で混合させてC/N比を35程度まで増
加させて投入実験を行った結果(その際COD負荷を4-9 kgCOD/m3/dayまで段階的に変化)、約一ヶ月間でアンモニア性窒素
の濃度が1000 mgNH4-N/kg-w.w.程度減少する希釈効果が観察された。また、ワラなどの難分解性物質を投入すると未分解
分がリアクター内に残存し含水率が下がっていく現象が見られた。また、リアクター内pHがアンモニア性窒素が存在する
ために常に8.0-8.5の値を示していた。これにより、嫌気性では分解不可能と考えられるアンモニア性窒素をアンモニアガ
スとして除去を行うアンモニア削減法が見出された。しかしながら、それはハードウェア上の問題があり今後の改良に期
待できる。

以上の事から、新規リアクターを用いた生ごみの無加水メタン発酵連続処理は原料が処理を左右する重要なファクターで
ある事が分かった。