住谷 敬太

DHSリアクターによる排水からのリン回収技術の開発

大橋晶良、井町寛之、原田秀樹


 発展途上国のための低コストで維持管理が容易な下水処理システムとして、UASBと懸垂スポンジ (DHS:Downflow Hanging Sponge) リアクターを組み合わせたシステムを本研究室では提案してきた。DHSカーテン型リアクターでは、実下水を用いた5年間 の連続処理により平均BOD除去率で95%以上、アンモニア態窒素除去率では約70%と安定した処理特性を有することが明らかになっている。これは汚泥保持能力が非常に高いことによるもので、余剰汚泥の引き抜きを行わずに長期間の連続運転が可能である。しかしながら、DHSリアクターの性能は、UASB法の下水処理水に対するものであり、DHSリアクターが直接に下水を受け入れて適切に処理できるかどうかは不明である。本研究では、DHSリアクターによる人工下水の直接連続処理実験を行った。

 実験装置は三角柱のスポンジ (容積14.4cm3) を87個、塩化ビニール板に接着し、カーテン状にしたものを密閉槽内 (5L) に設置した。供給排水は上部から流入され、右側を2m流下し、その後左上部に移送され再度2m流下し、合計4m長のスポンジを通過する。DHSリアクターは排水が流下中にスポンジに付着した微生物により処理される機構である。スポンジには実下水処理場の返送汚泥を植種した。スポンジ容積は1.25Lで、HRTは2時間に設定した。実験温度は全期間において20℃に制御した。人工下水の基質組成は、酢酸を単一の有機物源として300mgCOD/L、アンモニアを40mgN/Lに調整した。また、循環水を考慮に入れて人工下水と循環水の2種類の排水を合流させて2Qで供給した。そのときの流入水濃度は150mgCOD/L、20mgNH4-N/Lである。

 この実験装置により連続運転を行った結果、有機物除去率と窒素除去率はそれぞれ90%、50%と、UASB法なしでも安定した処理性能を示した。また同時に、リンの回収についても検討を行った。