岩城宏幸

EGSBリアクターの都市下水処理性能

大橋晶良、井町寛之、原田秀樹


グラニュール汚泥を形成維持することは嫌気性排水処理を行う上で重要な要素である。我々が日常排出する生活排水は主に低濃度 (1 gCOD/L以下) であり、また低温(20℃以下)である。従来、嫌気条件下における低温低濃度排水処理は、基質と嫌気性微生物の接触効率が良好でないため、グラニュール汚泥の形成維持は困難である。これらの問題を解決するために、改良されたシステムがEGSBシステムである。EGSBリアクターは低温低濃度の産業排水処理において大きな成功を収めてきたが、下水処理への適用例は極めて少ない。

そこで本研究では、EGSBリアクターを用いた実下水の連続処理実験を行い、その処理特性及び保持汚泥の性状変化を調べた。
本実験では、全容積70.5 Lのリアクターを使用し、植種汚泥に中温グラニュール汚泥を用いた。供給下水にスクリーン通過後の実下水を用い、水温は無加温の約9-26℃の範囲であった。運転開始時はHRT 5時間、上昇線流速 2.5 m/h、循環比143 %で運転し、その後HRTを2 時間 (25日目以降、Lv = 6 m/h、R = 127 %)にまで段階的に短縮した。

350日間の連続処理実験の結果、高濃度SS下水が流入した場合有機物除去能が著しく低下し、処理特性の把握が困難であった。そのため運転開始後218日目にリアクター前段に沈殿池を設置したところ、安定した有機物除去を行うことができ、平均Total COD除去率42%、Total BOD除去率38%、SS除去率48%であった。また平均メタンガス生成量0.19 kgCOD/m3/day, 平均溶存メタン生成量0.61 kgCOD/m3/dayであり、メタン生成の大部分は溶存メタンとして流出していることが分かった。

保持汚泥性状の調査の結果、保持汚泥濃度(MLVSS)は運転開始297日目でもリアクター高さ3.0 mまで約20~30 g/Lであり高濃度保持汚泥を維持することが出来た。汚泥沈降性(SVI)も20~30 ml/gSS であり高い沈降性が確認された。メタン生成活性はリアクター運転開始後、水素、酢酸、プロピオン酸基質において大きく低下したが、処理水への悪影響は見られなかった。

sUASBと都市下水処理能を比較した結果、UASBは温度低下による有機物除去能の低下が顕著に見られたが、EGSBは温度低下による影響はあまり受けなかった。