春日央司

Fair式を用いた確率降雨量の時空間分布の推定

陸旻皎

治水計画の立案の際に確率降雨量を算定する統計解析が行われる。現行の河川計画では日雨量・2日雨量を用いることがほとんどである。しかしながら、中小河川において日雨量・2日雨量よりも短い降雨継続時間の雨量を用いたほうが良いと考えられるような水文事象が発生している。よって、異なる降雨継続時間の降雨データを一体的に取り扱う必要性がある。その際、同じ分布形を用いても異なる降雨継続時間の降雨データに対してそれぞれ独立に母数推定を行うと、短い降雨継続時間の雨量が長い降雨継続時間の雨量を上回るという、ありえない現象が発生することがある。そこで本研究では、異なる降雨継続時間の降雨データを一体的に取り扱い、比較・検討を行うために、確率降雨強度式の1つであるFair式を用いて確率降雨量の算定を行い、全国の確率降雨量の時空間分布の推定を行った。Fair式を用いた確率降雨量の算定はすでに土木研究所によって行われているが、本研究ではそれに対しさらに多くの地点とデータ数を対象に行った。さらに、Fair式のパラメータ推定を3つの手法で行い、比較も行った。3つの推定方法の比較は、一般化極値分布(GEV分布)という確率分布形により求められた確率降雨量とどれだけ適合しているかを、2乗平均平方根誤差(RMSE)を用いて比較を行った。その結果、最も良かったもので、全国における100年確率降雨量の時空間分布の推定を行った。100年確率降雨量の空間分布は、降雨継続時間が1,2,3,4,6,8,12,24,48時間のもので推定した。降雨継続時間24時間のものからは、九州、四国、紀伊半島で非常に大きな雨量となり、台風によるものであると考えられる。それに対し1時間のものは降雨継続時間の観点から、雷雨性や前線性のものであると考えられる。降雨継続時間の長いものと短いものを比較してみると、降雨継続時間の短いものは、降雨継続時間の長いものほど地域性はなく、北日本を除き、全国のいろんなところで大雨が発生しうる。また北陸地方においても、所々大きな値が得られた。よって、中小河川の多い日本にとって短時間雨量を重視しなければならないのではないかと考えられる。