町田敬

雪中爆破による雪崩誘発技術に関する基礎的研究

陸旻皎

雪崩災害を未然に防ぐための対策法として、迂回又は避難をする消極的対策と、人工的に雪崩を発生させるなどの積極的対策の二つがあり、いずれも現場での状況判断により実施されている。この積極的対策法の一つとして、爆破による人工雪崩が実施されている。特に積雪層中に爆薬を仕掛け雪崩を誘発させる方法は、潜在的雪崩危険斜面の安全確保を広範囲において迅速に行うことができる方法である。しかし、この雪中爆破による雪崩の誘発は経験的手法によって施行されて来た為、未だ技術確立がなされていない。
本論文では、雪中爆破による人工雪崩誘発のための基礎的実験を行い、雪崩誘発に有効な装薬方法について検討を行っている。
実験地は、新潟県南魚沼市栃窪の平均斜度43度の自然斜面で実験を行った。本実験においての使用爆薬は、これまでの実験結果から含水爆薬のエマルション爆薬であるチタ・マイト(品名)を1孔につき300g用いている。
2004年の実験では、3ケースの装薬方法で実験を行い、雪崩誘発において滑らかなすべり面形成が非常に重要であるという実験結果を得ることができた。
2004年実験の結果を踏まえ、装薬におけるすべり面の形成について検討を行い、新たにその装薬方法を考案した。このすべり面形成のための装薬方法は、装薬最下段の装薬点を基準装薬点として、斜面下方に設定角度を決めた延長線上にすべり面形成のための装薬を行う方法である。この装薬方法は、計画段階の既知である基準装薬点の装薬深と斜度、設定角度から装薬深を算出することができる。
2005年実験では新たに考案した装薬方法において、設定角度を0度と15度の2ケースで実験を行った。2005年実験の結果2ケースともに雪崩が誘発できたが、設定角度15度での装薬方法を用いたケースにおいて雪崩誘発がより良く行なわれることを確認できた。また、爆破後の掘削断面観測より滑らかなすべり面が形成されたことを確認することができ、新たに考案した装薬方法の有効性の検証を行うことができた。
土質工学の斜面安全率の計算式を積雪に適応して、計画段階時での装薬方法による雪崩誘発の成否の検討を行うため、装薬形状をすべり面と仮定し爆破の影響を加えた安全率の爆破前後の比から境界条件の算出を行った。計算の結果、安全率の爆破前後の比から0.84から0.88の間に雪崩誘発成否の境界値があることが分かった。よって、計画段階の装薬方法おいては、0.84以下ならば雪崩誘発可能であるという結果を得ることができた。