本田真菜

高分解能数値地理情報に対応する実用的な分布型水文モデリングシステムの開発

陸旻皎


 流出モデルや融雪モデルに必要となる日射は、蒸発散や融雪などの熱交換を伴う地表面水文循環プロセスの中で重要なエネルギー源となり、分布型水文モデルでも必要となる入力データの1つである。しかし、日射量の詳細な地理的分布、季節変化、及び斜面特性を知るためには、観測密度の低い気象官署における全天日射観測データだけでは不十分である。そのため、観測密度の高いAMeDAS日照時間データを用いた実時間日射量算定式が提案された。本研究では、日射量推定モデルのGraphical User Interface化を行い、全国に約1300箇所あるAMeDAS観測地点の選択において、地図情報とあわせて表示することで直感的な操作を可能にした。 また、近年、数値地理情報の整備が進み、高分解能化しつつある。本研究室の分布型水文モデリングシステムでは、擬河道網の算出にデジタイズによって作成された流域界を用いている。数値地理情報が低分解能の場合、流域界の精度の影響が小さかったが、現在では数値地理情報が高分解能になるにつれ、これらの影響が大きくなりつつある。本研究では、流域界の問題があっても、簡便で正確に擬河道網の算出が行えるアルゴリズムを開発する。 また、これまで分布型水文モデリングシステムはCharacter-based User Interfaceであり融雪モデル、流出モデル及び追跡モデルは標準化済みである。そこで、より実用的にするため分布型水文モデルのGraphical User Interface化を行う。

 アルゴリズムによる流域界の修正を矢木沢ダム流域を用いて確認した。デジタイズした流域界と本来の流域界との間に窪地がある場合を確かめるため、
本来の流域界がほとんどわからないように、流域界を大きくデジタイズした。その結果、窪地の部分が流域外となり、本来の流域界に修正した。ただし、この流域は山間部なので、今後は低平地を含む流域界においても流域界の修正を可能にする必要がある。これまでCharacter-based User Interfaceだった擬河道網算出モデルは、Graphical User Interface化したことによって、初めて操作する人でも短時間で使用できるようになった。また、EXCEL等での作業が無くなり、より効率的に擬河道網を算出ことが可能になった。分布型水文モデルのGraphical User Interface化では、モデルの選択やパラメータの入力を簡単に行えるようになった。今後の課題は入力データの標準化である。