江口 仁平

産業副産物を混入した吹付けモルタルの特性

指導教官:丸山 久一

新潟県中越地域における還元スラグの排出量は年間18,000トン,鋳物灰の排出量は年間5,000トンである.過去に,消波ブロックとしての再資源化が行われている.本研究では,更なる再資源化の具体策として,還元スラグと鋳物灰を吹付けモルタル材として再利用する方法について検討した.
研究の目的として,吹付けモルタルとして利用するための要求性能として,空気量,圧送性,リバウンド率,有害物質の溶出抑制,圧縮強度,ひび割れについて検討した.また,普通モルタルの圧送性を評価するフレッシュ性状であるフロー値が,副産物混入モルタルにおいても使用できるかを検討し,不可能である場合は新たな評価指標の確立を目的とした.
本研究では,副産物混入量を各200kg/m3,各300kg/m3とし,フロー値が120mm程度となる配合を決定した.そして,現場吹付け実験を行い,フレッシュ性状,ポンプ圧送性,施工性,硬化後の品質について検討した.
その結果,副産物混入モルタルは,空気量が小さくなることがわかった.しかし,AE剤の調整により,改善は容易であると考えた.また,フロー値と圧送性の関係および作業員の感覚より,副産物混入モルタルは,混入量が多いほど圧送に最適なフロー値が大きくなることがわかり,それぞれの圧送に最適なフロー値を決定した.これにより,フロー値によりポンプ圧送性を評価することができないことがわかった.副産物混入モルタルのリバウンド率は,普通モルタルと同程度であり,混入量による影響はないことがわかった.有害物質の溶出は,一部の項目で検出されたが,過去の結果では検出されておらず,今後は環境基準値以下であると考えられる.副産物混入モルタルは,普通モルタルに比べ必要とする単位水量が多くなるが,圧縮強度は30N/mm2以上であり目標値をクリアした.しかし,硬化後に有害な乾燥収縮ひび割れが発生することがわかった.
フロー値によるポンプ圧送生の評価ができないことより,新たな評価指標の確立として,管壁とのすべり抵抗力に着目し,それより得られる付着力による圧送性の評価について検討した.すべり抵抗力測定装置によりすべり抵抗応力を測定し,各実験での垂直応力をすべり抵抗応力より,付着力を算出した.
その結果,各シリーズのフロー値と付着力の関係は相関関係があり,また一直線上に重なることより,付着力での圧送性の評価も出来ないことがわかった.
以上をまとめると,産業副産物を混入した吹付けモルタルは,空気量,リバウンド率,有害物質の溶出,圧縮強度については目標値をクリアでき,圧送することは可能であることは確認できたが,普通モルタルと同様のフロー値により圧送性を評価することができないや硬化後にひび割れが生じるという問題が生じた.これらを解決すれば,再利用することは可能である.また,付着力により圧送性の評価をすることもできないことがわかった.